研究課題
今年度は、大きさの異なる2種(大小)粒子を混合した3次元L ennard-Jones粒子系で実現される固体を一軸方向に引っ張った際の弾性塑性変形における、ミクロな構造と粒子のダイナミクスの関係について計算機実験によって調べた。本研究ではぐまず大小粒子の組成比を変えることにより、低温かつ高密度時、結晶・多結晶・ガラスという性質の異なる固体を作成し、温度制御した分子動力学法で(NVTアンサンブルを用いて制御しながら)一軸方向に伸張した。特に結晶や多結晶においては、変形が塑性領域に達すると、応力の顕著な多重降伏が観測された。さらに、構造と変形のダイナミクスに注目すると、応力降伏時に特定の構造をもつ箇所(主に結晶粒中の面心立方格子{111}面や粒界領域)で大規模な(メソスケールの)変形が起こることを見出し、変形箇所の可視化を行った。一方、ガラスを塑性変形させると、結晶や多結晶と同様に多重降伏が観測された。(但し、規模や頻度は異なる。)降伏が観測される際のダイナミクスに注目すると、過冷却液体における動的不均一性に似たメソスケールの多体的な協同運動が観測された。本来、過冷却液体の動的不均一性は、熱的に励起されるもので、構造緩和時間程度の時間スケールにおいて顕著に観測される。一方、本研究で観られた共同運動は、ガラス状態において観られたもので、なおかつ変形によって励起されたものである。そのため、観測される時間スケールは、系の構造緩和時間に比べて極めて短いものとなっている。ここで観られた様な塑性変形時における短時間での大規模な共同運動は、過去の理論的研究などには考慮されておらず、ガラスに関する新たな知見となりうると我々は考えている。
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Journal of Physics : Condensed Matter
巻: 22 ページ: 232102-1-232102-10
Proceedings of the National Academy of Sciences USA (PNAS)
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