研究概要 |
昨年度は、以下の2項目の研究を重点的に行った。 1.多重機能型PCP(Porous Coordination Polymer)の開発 高い貯蔵能を有するPCPを分子選択性を有するPCPで被覆することによって、コアシェル型ハイブリッドPCPの合成を行った。得られたハイブリッドPCPは選択的に直鎖アルカン分子のみを大量に貯蔵可能であることが明らかになった。直鎖アルカンの貯蔵量は単体のPCPを大きく上回り、結晶を複合化することによって、選択性と高い貯蔵能をハイブリッド結晶内に統合できることが明らかになった。本研究はAngewandte Chemieに採録された(Angew. Chem. Int. Ed., 2011, 50, 8057-8061)。 2.PCP薄膜化および電子デバイスへの搭載 PCP結晶をセンサー素子であるQCM(Quartz Crystal Microbalance)に搭載することでガスセンサーの開発に成功した。QCMは重量増加を検出するセンサー素子であり、電極の重量が増加することを周波数変化として検出する。このQCM電極表面にPCP結晶を固定した。PCPは有機溶媒を吸着し、重量増加を示すため、PCPで電極表面を被覆することによってガスセンサーとして機能することが明らかになった。本研究はJ. Am. Chem. Socに採録された(J. Am. Chem, Soc., 2011, 133, 11932-11935)。 また、酸化還元活性なPCPの合成に成功し、電極表面で薄膜化することによって、イオン貯蔵材としての可能性を示した。フェロセンジカルボン酸を骨格中に組み込んだPCPを電極表面上で薄膜化し、電気化学測定を行った。PCPのフェロセン部位が酸化還元反応をすることによって、カウンターイオンを細孔中に取り込むことが明らかになった。これはPCPのイオン貯蔵能を示唆する結果である。本研究はDalton Transactionに採録された(Dalton Trans., 2012, 41, 3924-3927)。
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