金属イオンと有機配位子が自己集合的に組み上がることで構築される多孔性配位高分子(PCP)は、吸蔵材、分離材、触媒材料として高い特性を示すことが明らかになってきており、近年精力的に研究が行われている。本研究課題では電極基板上でPCPを結晶化させ、その規則的なナノ細孔を利用した機能性デバイスの創出を目指している。 最終年度は以下の3項目において成果が得られた。 1.多孔性配位高分子を用いた複合粒子の作成 PCPでは金属イオンや有機配位子を様々に代えることで、細孔特性を自在に設計することが可能である。同形の骨格構造を有するPCPをエピタキシャル成長によって複合化することで、コアシェル型の構造体の作成を行った。コア結晶には蛍光発光を有するPCPを、シェル結晶にはゲスト選択性を有するPCPを用いた。この組み合わせによって得られたコアシェル型PCPは、選択的にゲスト分子を取り込み、蛍光発光を示すことが明らかとなった。センサー粒子としての応用が期待できる。 2.基板上への多孔性配位高分子の固定化 一般に金属酸化物は成型が容易であるため、薄膜化やパターニングが非常に容易である。本課題では酸化アルミニウムと有機配位子を反応させることによって、基板表面でのPCP合成を行った。得られたPCPは酸化アルミニウムの形状を維持しており、電極表面に固定化する方法として非常に有望であることが明らかとなった。 3.多孔性配位高分子を用いたPCPデバイス 重量変化を振動数の変化として検出することが可能な水晶振動子マイクロバランス(QCM)の電極表面上でPCPを薄膜化し、PCP/QCMハイブリッドセンサーを作成した。PCPは蒸気を吸着し、重量が増加するため、PCP/QCMハイブリッドセンサーによって有機分子の存在を検出することが出来る。QCM上のPCP薄膜を複合膜にすると上記選択性が向上する結果も得られており、1の結果と組み合わせることで、高度なセンサーデバイスの作成が可能となった。
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