研究概要 |
KamLANDは直径13m、厚さ135μmのバルーンに入った高純度液体シンチレータ(LS)1,000トンを観測のターゲットとして用いている。2011年度に実験を開始するKamLAND-Zenでは、この既存バルーンに、二重ベータ崩壊核^<136>Xe(90%濃縮、400kg)を含有させた新LSの入った直径3.4mのミニバルーンをインストールして、ニュートリノを伴わない二重ベータ崩壊事象の探索を行う。今年度はこのミニバルーンの開発、テストが中心となった。 まず、素材選定から、候補素材でのテストバルーンの製作、テスト、実寸大の試作器でヘリウムガスによる膨張テストが行われた。この後、模擬ウェル(深さ8m、半径5mの扇型をした大型水槽)をKamLANDに見立て、実機サイズバルーンで、2回のインストールテストを行った。第一回目のテストでは、80μmのナイロン製のバルーンを用い、実際の環境に近い状況で各種テストが行われた。デザインの確認、投入方法、密度差による層構造作成テスト、送液及び排液配管の確認、緊急時の排液及びポンプのテスト、撤去方法、照明器具の強度の確認、各種モニターカメラの視野、位置、解像度の確認といった各種データを得ている。これらを踏まえ、本番に使用する物の操作性、人員配置も含めた最終テストを行った。この時使用されたバルーンは本番と同じ厚さ25μmで、まず、この薄いバルーンの取扱い方法、バルーンの支持紐や支持フランジ取付けの作業工程の確認を行った。この後、プールにミニバルーンをインストールし、投入方法や送液速度と膨張の様子を確認し、本番での手順、手法を確立させた。送液時には、層作りのテストも再び行われ、どれくらいの密度差が維持できるかを確認した。また、本番と同じロードセルを用い、送液による重量変化の確認や、ネック部にかかる負荷をいかに調整するかも確認した。これらからミニバルーンインストール手法を確立させた。
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