本年度は外来遺伝子の転写活性化、薬物送達キャリアの遺伝子送達能、薬理評価への応用に関する研究を行った。 1.Mt転写因子TFAM-プラスミドDNA複合体のin vitro転写評価 本研究ではMt内での外来DNAの転写活性化を目的としてMtDNA結合タンパク質であるMitochondrial transcription factor A (TFAM)に着目し、TFAM-プラスミドDNA複合体が転写に与える影響について解析した。その結果、これまでプラスミドDNAの凝縮化剤として用いられてきたProtamineと比較しTFAMを用いることでin vitroにおける転写効率が約2倍上昇した。(論文投稿準備中) 2.R8修飾Mt融合性リポソームのMt移行量評価 Mt内で外来遺伝子を発現させるためには十分量の外来遺伝子をMt内に送達することが必要である。本研究では遺伝子キャリアのミトコンドリアへの送達量を定量的PCR法により解析した。予備検討の段階であるが、遺伝子キャリアとして市販されているリポフェクタミンと比較して、膜透過性ペプチドであるR8を修飾したMt融合性リポソームは約300倍量の外来DNAをMtへ送達可能であることが明らかとなった。 3.PC-SOD搭載R8リポソームによる抗酸化効果 R8リポソームを用いた機能評価の応用例として、本研究では抗酸化酵素SODに着目した。タンパク質のSODは細胞親和性に乏しいため、レシチンを修飾したSODとR8をリポソームに搭載することで、細胞内への効率的な導入、および細胞内活性酸素の除去を試みた。その結果、PC-SOD搭載R8リポソームはPC-SOD単独群と比較して約3倍の細胞内導入量、約4倍の細胞内活性酸素除去効果を達成した。(Furukawa R et al. BBRC 2011 404 (796-801))
|