研究課題
本研究では、半導体量子ドットの中間バンド型太陽電池への応用を目指している。量子ドットを用いた中間バンドの形成方法としては、量子ドットを多重積層させることで生じるミニバンドを利用することが期待されるが、そのためには、量子ドット間を電子的結合させることが必要であり、積層時における量子ドット間(中間層)の膜厚の制御が重要となる。これまで作製されている量子ドット太陽電池は結晶成長の問題から中間層の膜厚が40nm程度の厚いものが多く、ミニバンドの存在を示唆する特性は得られていない。そこで、今年度は積層量子ドットの成長条件の最適化に行った。研究方法としては、まずGaAs(311)B基板上の10層積層InGaAs量子ドット構造において中間層膜厚を薄くすることに取り組んだ。これまで、中間層を薄くした積層量子ドットでは、界面に多量の欠陥が生じ、結晶性が劣化することが問題となっていた。この対策として、本研究では量子ドットの成長速度の最適化及び材料供給後の成長中断を取り入れた。その結果、15nmの中間層膜厚においても積層量子ドットを作製することに成功した。次に、中間層膜厚を15~40nmで変化させたサンプルにおけるPhotoluminescence (PL)発光特性を測定し、量子ドット間の電子的結合を評価した。中間層膜厚が厚いサンプルにおいてはシングルピークを持つPL発光スペクトルが観測されたのに対し、中間層膜厚が薄いサンプルにおいては同波長のピークに加え、さらに長波長側にピークを有したPLスペクトルが得られた。また、長波長側の発光成分は中間層膜厚を薄くするに従って長波長化する傾向が観測された。これらの結果は、中間層膜厚の薄いサンプルにおいて量子ドット間が電子的に結合していることを示唆しており、中間バンド型太陽電池において、非常に有効な結果が得られたといえる。
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巻: 印刷中