研究課題
本研究では、半導体量子ドットを利用した太陽電池の高効率化を目的としている。本太陽電池においては、量子ドットを近接積層して量子ドット間を電子的に結合させてミニバンドを形成することが重要とされる。また、光吸収によって生成されたキャリアを効率的に取り出すには、量子ドット層における発光再結合損失を少なくすることが課題とされる。そこで、今年度は(1)成長中断を利用した量子ドットの近接積層及び(2)GaAsSb層を用いた再結合損失の抑制に取り組んだ。(1)GaAs(311)B基板上の10層積層InGaAs量子ドット構造において量子ドット間距離即ち中間層膜厚の異なるサンプルを作製した。このとき量子ドットの形成過程において成長中断を入れることで中間層膜厚を10nmまで減少することに成功した。また、中間層膜厚を10~40nmで変化させたサンプルにおいて時間分解フォトルミネッセンス測定を行い、各サンプルにおけるキャリア寿命を評価した。その結果、中間層膜厚が10nmのサンプルにおいて、キャリア寿命の顕著な増加が確認された。このことは、量子ドット間の電子的結合を示唆しており、中間バンド型太陽電池において、非常に有効な結果と考えられる。(2)GaAs(311)B基板上にGaAsSb層を形成し、その上にInGaAs量子ドットを作製した。このとき、GaAsSb層におけるSb組成を14%程度にすることで電子と正孔の閉じ込め位置が空間的に分離されるタイプII量子構造が形成でき、発光再結合の抑制を可能とした。また本成果を太陽電池デバイスに応用し、電流値の増加を達成した。
3: やや遅れている
東日本大震災の影響により、一時的に実験装置を利用することができなかったため
量子ドットの多重積層技術として計画していたGaAsP歪み補償層の結晶成長は、分子線エピタキシー装置に支障をきたす恐れがあるため、成長中断を用いた多重積層技術の研究を代替法として同時に遂行する。
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Journal of Applied Physics
巻: 111 ページ: 074305-1-074305-2
10.1063/1.3699215