研究課題/領域番号 |
10J02292
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
川守田 創一郎 北海道大学, 大学院・総合化学院, 特別研究員(DC1)
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キーワード | 担持触媒 / ホスフィン / シリカゲル / ホウ素化反応 / C-H活性化反応 |
研究概要 |
本年度において実施されたシリカゲル担持かご型ホスフィン-Rh錯体を用いた、窒素配向基を用いるアレーン類のオルト位C-H直接ホウ素化反応とPd錯体を用いた活性化されていない塩化アリールのホウ素化カップリング反応について報告する。 以前までの研究において、ケイ素架橋部位を有したコンパクトなかご型トリアルキルホスフィン:SMAPをシリカゲル上に担持した新規固相担持配位子(以下、Silica-SMAP)がIr触媒を用いたジボロン化合物によるアレーンのオルト位選択的なC-H結合直接ホウ素化反応において高い活性を示すことを明らかにした。 本年度においては、Silica-SMAP-Rh触媒系がジボロン化合物による窒素官能基を有するアレーン類のオルト位選択的なC-H直接ホウ素化反応に高い適用性を示すことを見出した。本系では、既存の触媒系では達成されていない、様々な窒素官能基を配向基として利用でき、オルト位ホウ素化反応における基質の適用範囲を飛躍的に向上させた。本系は、以前に報告しているIrを用いた系と良い相補性を示し、IrとRhの使い分けにより、有機合成上利用価値の高い、様々なホウ素化アレーン誘導体の効率的合成を可能とする。 さらにSilica-SMAP-Pd触媒が、活性化されていない塩化アリールとジボロン化合物によるホウ素化カップリングに高い適用性を示すことを見出した。通常、塩化アリールのような反応性の乏しい基質を用いたカップリング反応においては、立体障害の大きいホスフィン配位子を利用した、配位不飽和なPd種の発生が必須となる。一方、Silica-SMAPにおいてはシリカゲル上に担持されたSMA、P分子は立体的に小さいにも関わらず、配位不飽和Pd種を効率的に発生させることができる。そのため、Silica-SMAP-パラジウムは活性化されていない塩化アリールのホウ素化カップリングに極めて高い活性を示し、通常では適用困難な非常に立体障害の大きい塩化アリールのホウ素化も実現している。本研究により、Pd触媒によるカップリングにおいて、配位子の立体障害は反応加速に必須では無いことが証明された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究は当初の計画より進展しているものと考えている。当初の研究計画であるC-H結合の直接ホウ素化における、基質適用範囲の拡大は本年度すでに実現している。加えて、本年度では固相担持配位子Silica-SMAPがパラジウム触媒を用いたカップリング反応においても大きな反応加速効果を示すことを見出している。この研究において、パラジウム触媒を用いたカップリング反応の配位子効果において非常に重要な知見を得ることができ、この方法論を今後さらに展開させることが可能であり、当初の計画以上の成果が出たと言える。
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今後の研究の推進方策 |
本年度に見出した、窒素官能基を配向基としたアレーン類のオルト位C-H直接ホウ素化反応にわいてSilica-SMAP-Rh触媒は、他の触媒系と比較して非常に高い触媒活性を有している。そのため、本触媒系は現在の遷移金属触媒の分野において最も困難な課題の一つであるアルキルC-H結合の直接変換反応への適用について興味が持たれる。現在、予備的な実験において、Silica-SMAPの類縁体であるシリカゲル担持かご型トリアリールホスフィン(Silica-TRIP)が窒素原子に隣接するアルキルC-H結合のジボロン化合物による直接ホウ素化反応に極めて高い触媒活性を示すことを見出している。今後は、この反応の適用範囲等を検討し、固相担持かご型配位子によって達成される特異な反応場を用いた独自の反応開発を展開していきたい。
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