我々の身の回りにあるアクチュエータと比較すると、生体内の筋肉は極めて高いエネルギー変換効率を有していることから、筋肉組織をアクチュエータとして用いることが可能と考えられる。これまでに、生体内の筋肉組織や心筋細胞を用いて、アクチュエータへの応用を試みた例はいくつかあるが、細胞数の確保が困難、倫理的な問題といった課題が挙げられる。本研究では、半無限的に増殖可能な筋芽細胞株C2C12細胞と機能性磁性ナノ粒子を用いて人工的に三次元筋組織を作製し、「機能する」つまり電気刺激に応じて収縮運動する人工筋組織(バイオアクチュエータ)を構築することを目的として研究を行った。平成22年度は、研究実施計画に基づいて、磁力を用いた三次元筋組織構築法に関する研究、電気刺激培養による強力な筋組織の誘導の2つの課題に関して研究を行った。磁力を用いた三次元筋組織構築法に関する研究では、機能性磁性ナノ粒子を用いて磁気標識した筋芽細胞を磁力によって環状に集積させて環状筋組織を作製し、その後作製した環状筋組織を筋分化誘導培地で培養を行い、分化した筋組織を誘導することができた。また、本方法で作製した筋組織は、電気刺激に応答し力を発生したことから、本方法で作製した筋組織はバイオアクチュエータに応用可能であることが明らかとなった。また、電気刺激培養による強力な筋組織の誘導については、電気刺激を与えながら筋組織を培養した結果、筋組織の収縮力を向上できることがわかった。高性能なバイオアクチュエータ作製のためには強い収縮力を発生する筋組織を誘導する必要があり、本研究で用いた手法で、電気刺激による筋組織培養の有効性を示すことができた。
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