研究課題/領域番号 |
10J02311
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
澤山 正貴 千葉大学, 大学院・融合科学研究科, 特別研究員(DC1)
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キーワード | 明るさ知覚 / 分節領域 / 空間的体制化 |
研究概要 |
本研究課題では、輝度が空間的に変動する領域(分節領域)内での明るさ知覚に関して検討している。昨年度までの研究では、分節領域内での明るさ知覚に影響を及ぼす空間要因を明らかにするため、分節領域内の検査領域とその周辺に配置された複数の小領域との間の空間的な体制化のされ方を、テクスチャの類似性の要因、もしくは運動方向・運動量の類似性の要因によって操作し、その影響を検討した。その結果、検査領域と周辺領域との間のまとまり感が強い場合に、周辺領域からの影響が強くあらわれた。この結果は、分節領域内での明るさ知覚が空間的体制化によって影響を受けることを示唆しているが、検査領域と周辺領域が類似した刺激特徴を持つ場合に明るさ知覚が変化すると考えても説明できる。この二つの可能性に関して検討することを本年度の研究の目的とし、刺激変化の同期による空間的体制化が分節領域内での明るさ知覚に及ぼす影響を検討した。同期性の要因を用いると、運動方向と運動量が検査領域と周辺領域との間で異なっていても、刺激変化のタイミングを合わせるだけでまとまり感を引き起こすことができる。そのため、分節領域内での明るさ知覚に対する影響が、運動方向や運動量などの刺激特徴の類似性によるのか、空間的体制化の働きによるのかを検討することが可能になる。実験では、刺激変化の同期によって、検査領域が周辺領域とまとまって知覚される条件と切り分けられる条件を設けた。実験の結果、分節領域内での明るさ知覚に空間的体制化が影響を及ぼすことが示された。特に、検査領域が周辺領域とまとまりを持つ場合には周辺領域の輝度から検査領域の明るさへ及ぼす影響が強く、切り分けられる場合にはその影響が弱まった。以上の結果は、刺激特徴の類似性を持たない場合でも空間的体制化は分節領域内での明るさ知覚に影響を及ぼすことを示唆している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題の目的は、分節領域内での明るさ知覚に影響を及ぼす空間要因を明らかにし、その処理メカニズムに関する理解を深めることにある。昨年度の研究では、テクスチャの類似性の要因、運動方向・運動量の類似性の要因を操作することによって分節領域内での明るさ知覚に対する空間的体制化処理の影響を示したが、それらの結果は刺激特徴の類似性という別の観点から説明できる可能性があり、この二つの可能性を検討することが本年度の研究の目的であった。刺激変化の同期の要因を用いて行った本年度の検討は、空間的体制化が分節領域内での明るさ知覚に、刺激特徴の類似性とは無関連に影響を及ぼし得ることを示した。以上の研究成果より、本研究課題はおおむね順調に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
本年度までの研究では、テクスチャの類似性の要因、運動方向・運動量の類似性の要因、刺激変化の同期の要因によって、分節領域内の検査領域と周辺領域との間のまとまり感を操作した検討を行い、分節領域内での明るさ知覚に空間的体制化処理が影響を及ぼすことを示した。今後の研究では、これらの知見の一般性を探るために、色の変化を用いたまとまり感の操作を行い、分節領域内の明るさ知覚に及ぼす影響を検討する。ここで、仮に、分節領域内での明るさ知覚に及ぼす空間的体制化の影響が刺激属性によらず一般的に働くものであるならば、色の変化で操作したまとまり感に応じて、検査刺激の明るさ知覚が変化すると予測できる。
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