研究課題/領域番号 |
10J02339
|
研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
谷口 雅浩 熊本大学, 大学院・薬学教育部, 特別研究員(DC1)
|
キーワード | フェロモン / ESPファミリー / 特異的認識 |
研究概要 |
フェロモンとは、同種間で社会行動や生殖行動に影響を与える物質である。フェロモンの重要な働きとして、同種の別個体を正確に認識する役割がある。個体認識の仕組みを理解する上で、受容体がどのようにしてフェロモンを厳密に認識するかを理解することは重要であるが、精密なリガンド識別メカニズムについての知見は十分でない。共同研究者である東原らは、オスマウスの涙より分泌される新規ペプチドESPIを同定し、38種類からなる新規の多重遺伝子ファミリー(ESP ファミリー)の存在を明らかにした。ESP4は、外分泌腺のうち、眼窩外涙腺、顎下腺、ハーダー腺に分泌されており、ESP1とのアミノ酸配列の相同性が高い。我々は、ESP4がESP1と異なる受容体で認識されることを示唆する結果を得ている。本研究は、ESP4の立体構造および受容体認識機構を解明し、構造生物学の観点から、受容体の厳密なリガンド識別機構を明らかにすることを目的とする。 23年度は年次計画の目標である受容体活性化能を持つ最小構造領域のESP4を取得するために、NMR法に基づくESP4の変異体解析を行った。NMR実験によりN末端の30残基程度において運動性が高いことを明らかにし、N末端の長さが異なる変異体の作成に取り組んだ。調製した幾つかの変異体のNMR解析により、最小の構造領域を同定した。また、23年度の目標であるESP4と受容体との結合界面の同定に向けて、ESP4に特徴的な分極面および構造領域に対する変異体の作製に成功した。現在、共同研究により活性を確認中である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
凝集性の高いESP4蛋白質において、オリゴマー化を抑える変異体、受容体結合部位を同定するための変異体の大量調製法を確立することに成功した。年次計画の通りに、目標を達成していることから、順調に進展していると考えられる。
|
今後の研究の推進方策 |
ESP4受容体の同定に向けて、ESP4の鋤鼻神経刺激活性化能を向上する必要がある。現在、鋤鼻受容体周辺の環境に着目し、ある化合物を加えることでESP4の構造変化が生じていることを明らかにした。今後、ESP4受容体の同定および大量調製法の確立を行い、ESP4-受容体複合体の結晶構造を解明していく。
|