研究課題
GaAs/AlGaAs半導体ヘテロ界面に生成する2次元電子系に静電的に形成された幅数百nmで長さ1μmの量子細線にて動的核スピン偏極を生成し、電流ゆらぎ測定および抵抗検出核磁気共鳴測定という二つの測定手法から動的核スピン偏極の生成に伴って量子細線を伝導する電子のスピン分極率が10~40%低下することを示した。本研究を通して動的核スピン偏極が量子細線に局所的であることが示され、量子細線中における動的核スピン偏極のメカニズムが明らかになった。本成果は量子細線にて局所的簡便に核スピン制御が可能であることを示しており、核スピンを用いた固体量子情報素子の実現の礎となるものである。その他、電流ゆらぎ測定を通して「(1)量子ホール効果ブレークダウンの前駆現象の観測」や「(2)量子干渉計におけるゆらぎの定理の検証」、「(3)トンネル磁気抵抗素子におけるスピン依存伝導に起因する電流ゆらぎの減少の観測」を行った。これらの成果は通常の電気伝導度測定からは得ることができない。(1)は量子ホール効果を用いた抵抗標準の精度に関する新しい知見を与えるものであり、さらなる詳細な実験を行うことで量子ホール抵抗の制度が劣化するメカニズムが明らかにできるものである。(2)は量子系におけるゆらぎの定理の検証を行った世界で初めての実験であり、半導体人工量子系における量子統計物理学という新しい研究分野を拓くものである。(3)は金属系においても電流ゆらぎ測定を通して量子的な電子伝導を観測したものであり、電流ゆらぎ測定の普遍性および有用性を実証するものである。これらの実験成果は電流ゆらぎ測定が非平衡系における電子状態を検出するツールとして非常に優れたものであることを示しており、本研究の課題である電流ゆらぎ相関の測定を通した量子相関の検出への基礎となるものである。
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