腫瘍標的性を付与する水溶性高分子をsiRNAキャリアに修飾することで生じる細胞内動態の悪化の改善を目指し、新規ペプチド(shGALA)を設計した。本年度ではこのペプチドを修飾したsiRNAデリバリーシステム(shGALA-MEND)の有用性を、in vitro細胞系、in vivoがんモデルを用いて評価した。 初めに設計したペプチドが、コンセプト通り作用するかを培養細胞系で評価した。PEGを修飾したsiRNAキャリア(PEG-MEND)では標的遺伝子のノックダウンは認められなかった一方で、PEG-MENDにshGALAを修飾すると(shGALA-MEND)、量依存的なノックダウン活性の向上が認められた。また、共焦点レーザー走査顕微鏡を用いた観察の結果、shGALA-MENDにおいては細胞に取り込まれた後に効率的に細胞質に移行していたが、PEG-MENDではエンドソーム/ライソソーム分解系に留まっている粒子が多いことが明らかとなった。このことから、予想した通りshGALAはPEG-MENDの細胞内動態を改善可能であることが明らかとなった。また次に、in vivo皮下移植がんモデルマウスを用いて、抗腫瘍効果を持つsiRNAを搭載したキャリアが全身投与後に、遺伝子のノックダウンおよびそれによる抗腫瘍効果を示すかを評価した。4 mg siRNA/kg body weightという投与量において、腫瘍組織において有意なノックダウンならびに、抗腫瘍効果を示すことが明らかとなった。 これらの結果はin vivo siRNAデリバリーにおけるshGALAの有用性を示すものであり、既に特許出願を行っている。また、これらの内容に関して現在学術雑誌に投稿準備中である。
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