研究課題
本年度は、サルエイズモデルにおいてワクチン誘導Gag、Vif、Nef特異的CTLがSIV複製にどのような影響を与えるのかを解析するため、MHCクラス1ハプロタイプ90-010-Ie共有アカゲザル5頭をGagワクチン接種群、6頭をVif/Nefワクチン接種群、8頭をワクチン非接種群としてSIVmac239チャレンジを行い、血漿中ウイルス量の測定、SIV特異的T細胞応答の解析を行った。SIVチャレンジの結果、ワクチン非接種群はいずれもSIV複製制御には至らなかったが、Gagワクチン接種群では、5頭中3頭がSIV複製制御に至った。SIV感染急性期のGag特異的CTLをIFN-γ産生によって検出したところ、SIV複製制御に至った3頭では、高頻度でGag特異的CTLが誘導されていた。このことから、SIV感染急性期のワクチンによって誘導されたメモリー由来の効率の良いGag特異的CTL誘導がSIV複製制御に有効であることが示唆された。また、Vif/Nefワクチン接種群では、6頭中3頭で血漿中ウイルス量の低下が認められた。SIV感染急性期のVifおよびNef特異的CTL応答を解析したところ、Vif/Nefワクチン接種群では、Vif特異的CTLを優位に誘導した3頭がSIV複製制御に至り、Nef特異的CTLのみが誘導され、Vif特異的CTLが誘導されなかった3頭はSIV複製制御に至らなかった。このことから、SIV感染急性期のワクチン接種によるメモリー由来の優位なVif特異的CTL誘導が初期SIV複製制御に有効であることが示唆された。本研究によって、ワクチンによるCTLメモリー誘導が感染急性期のGagおよびVif特異的CTLの優位な誘導に結びつくことにより、HIV複製制御に至る可能性が示された。本研究はCTL誘導型予防エイズワクチン開発における抗原設計に重要な知見を与えることが期待される。
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Microbes Infection
巻: 13 ページ: 1169-76
10.1016/j.micinf.2012.07.016.