本研究ではFM-AFMを用いた2次元DNA結晶の液中表面構造観察および3次元水和構造計測を実施した。試料として、E.Winfreeらが提案したDAO-E DNAタイルを使用した(doi:10.1038/28998)。DNAタイルの各サブユニット中にはHolliday構造が存在しているため、FM-AFMを用いた構造計測は遺伝子機能の直接的な解明に発展する可能性がある。また配列既知の合成DNAを用いることから、塩基配列に依存したDNA分子の構造を観察することによりDNA結合タンパク質の塩基配列認識機構の解明に貢献することが期待される。FM-AFM観察結果から、DNAタイルを構成する各サブユニットに存在するdsDNAのバンドル状の表面構造が明瞭に観察された(50mM NiCl_2)。またdsDNA分子内部では軸方向に沿って糖-リン酸バックボーンに対応する周期的な凹凸が観察された。さらにサブユニット中のdsDNAが右巻きらせん構造を有していること、またdsDNAの主溝、副溝と呼ばれる幅の異なる溝が糖-リン酸バックボーン間で交互に配列している様子も観察された。DNAタイルの液中観察を行った後、探針のY座標をずらしながらX-Z面内で2次元の共振周波数シフト(Δf)分布測定を行うことで、3次元Δfマップを取得した。DNAタイル表面の3次元Δfマップから再構成された、X-Y断面における2次元Δf分布像(50mM NiCl_2中)からはDNAタイルを構成するサブユニット中のdsDNAのバンドル状構造が明瞭に観察された。さらに、DNAタイル中に存在するdsDNA分子鎖に沿った垂直断面(X-Z断面)における2次元Δf分布像には、DNA分子表面近傍の水和構造に対応する振動的な分布が観察された。
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