研究概要 |
平成22年度はp型超ナノ微結晶ダイヤモンド/水素化アモルファスカーボン混相(UNCD/a-C:H)膜を用いた太陽電池の作製およびUNCD/a-C:Hのn型化の試みに重点を置いた研究に取り組んだ.具体的には,1-1.p型UNCD/a-C:Hとn型Siとの組み合わせによるpn接合型太陽電池試作,1-2.UNCD/a-C:Hのn型化ドーパント材模索を行った. 1-1のpnヘテロ接合型ダイオード試作では,暗状態において整流比10^3(±1V間)以上の明確な整流特性を確認し,UNCD膜中のキャリア濃度は1.4×10^<17>cm^<-3>,膜側に広がる空乏層幅は-5V逆方向電圧印加下で50nm以上となることを明らかにした.結果を査読付学会誌Japanese Journal of Applied Physicsにまとめた.界面付近でのキャリアの伝導機構については,低電界領域では拡散電流,高電界領域ではトンネル電流が支配的になることを考察している.これはUNCDに特徴的な粒界がトンネルセンターとして働いているためと考えられる.ダイオードの深紫外線照射下における受光特性は70%を超える高い外部量子効率を確認した.このことは生成したフォトキャリアがトラップされることなく有効に回収できていることを意味している.太陽電池特性ではA.M.1.5の疑似太陽光照射下において光起電力特性を確認した.今後UNCD膜中のドーピング量を変化させ,キャリア濃度の最適化を図ることで高い効率が期待できる. 1-2のUNCDのn型化では,Li3PO4ドープ,Nドープをそれぞれ試みた.Li3PO4ドープではアンドープ膜に比べて僅かな伝導度の上昇が見られたものの,シンクロトロン光を用いたNEXAFS, XPS, XRD測定では,ドープによって膜構造の大幅な変化が確認され,n型機構の発現には至らなかった.Nドープに関しては有益な結果を得ている.ドープ量によって電気伝導度が10^2~10^3程度上昇し,キャリア濃度制御が可能であることが明らかとなった.結晶ダイヤモンドと異なり低い活性化エネルギー(約100meV)を形成し,室温でデバイス応用可能である.NEXAFS, FTIRの結果からは,N原子はUNCD膜中の結晶粒界に優先的にドープされることが分かった.結果を査読付学会誌Applied Physics Express, Diamond and Related Materialsにまとめている.
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