研究概要 |
20週齢以降のIL-10-/-マウスの大腸について病理組織学的に検討したところ、野生型マウスに比較し、強い炎症性変化を認めた。この慢性炎症は特に盲腸において顕著な傾向にあった。また、各種炎症性サイトカインの発現について定量RT-PCRにて検討したところ、TNF-alpha, IL-1beta, IL-6などの各種炎症性サイトカインや、IL-12, IFN-gammaなどのTh1サイトカインの発現上昇を認めた。また、IL-10-/-マウスの大腸におけるAIDの発現について検討したところ、定量RT-PCRにて、IL-10-/-マウスの大腸では野生型マウスに比較し、有意なAID発現の上昇が認められた。さらに、AID特異的なプローブを用いたin situ hybridizationにより、上皮細胞に異所性にAIDが発現していることが分かった。以上の結果より、IL-10-/-マウス大腸では、慢性的な炎症刺激に伴いAIDが上皮細胞に異所性に発現している可能性が示唆された。 肝細胞や胃粘膜上皮細胞では、AIDはNF-kappaB依存性に発現していることを以前我々は明らかにしている。IL-10-/-マウスの大腸上皮におけるAIDの発現メカニズムを調べるため、約40週齢のIL-10-/-マウスに対しTNF-alpha receptor抗体の投与実験を行った。その結果、TNF-alphaをはじめとする各種炎症性サイトカインの発現は減少し、大腸上皮におけるNF-kappaB活性は低下した。さらに、TNF-alpha receptor抗体を投与したマウスでは、大腸上皮におけるAIDの発現量の有意な減少も認められた。以上の結果は、IL-10-/-マウスにおける慢性腸炎に伴うAID発現が、TNF-alphaなどの刺激によるNF-kappaB活性化経路に依存している可能性を示唆している。
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