ファイバー領域を35型アデノウイルス(Ad)由来のものに置換したAdF35ベクターは、ほぼ全ての細胞に発現しているCD46を認識し感染するため広い感染域を持つとともに、一方で肝臓への集積も極めて低いことから、標的細胞指向性を有したターゲティングAdベクター開発に向けた基盤ベクターとして有望である。一方で、ターゲティングAdベクター開発に向けては、標的組織にのみ高い親和性を有する新たな機能性ペプチドを同定し、ファイバー改変AdF35ベクターに搭載させる必要がある。そこで、研究代表者らはファージ表面提示法による機能性ペプチドのスクリーニング手法を改良し、ランダムペプチドを挿入した35型Adファイバーノブ全体をファージ表面に提示させたライブラリ系を用いることとした。しかしながら、十分なライブラリサイズを有するファージの取得が困難であった。そこで、本年度は別のアプローチで、標的組織特異的に遺伝子導入するAdベクターの開発を目指した。すなわち、ファイバー領域をT4ファージ由来のフィブリチンで置換するとともに、ファイバーノブを欠損させたノブレスファイバーを有するノブレスAdベクターに、ヒトフィブロネクチンtypeIIIドメインを基盤とする低分子化抗体様分子であるMonobodyを挿入したMonobody提示Adベクターを開発した。その機能評価の結果、Monobody提示Adベクターは、標的分子に特異的に結合し、効率的に遺伝子導入可能であった。今後、Monobodyを挿入したAdベクターは、標的組織特異的な遺伝子導入を達成するターゲティングAdベクターとしての応用が期待される。
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