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棘皮動物は左右相称動物に含まれるにも関わらず、その成体は例外的に五放射相称である。棘皮動物のこの特異なボディープランへの進化を理解するうえで、重要になるのが体軸、特に前後軸である。左右相称動物の前後軸のパターン化はHox遺伝子群によって調節されており、Hox遺伝子群の染色体上での並びと前後軸にそった発現領域がおおよそ一致する。したがって、棘皮動物の発生過程におけるHox遺伝子の発現パターンから、前後軸を探ることは当然のアプローチである。これまでに申請者は直接発生型ウニ、ヨツアナカシパンを用いて全発生過程におけるHox遺伝子群の発現パターンを明らかにしており、この結果は、棘皮動物の2つの主要な前後軸モデル、Rays as axesとRays as appendages、の後者を支持した。しかしながら、ヨツアナカシパンの詳細な発生過程はこれまで観察されていなかったため、発現領域と構造を正確に対応できていなかった。そこで本年度はヨツアナカシパンの各発生ステージの幼生の連続切片を作成し、三次元再構築することによって、内部構造の発生の詳細な観察を行った。その結果、ヨツアナカシパンは一般的な間接発生種とは全く異なる方法で体腔などの構造を形成することが明らかとなった。一般的な間接発生種のウニでは体腔は腸体腔的に形成されるが、ヨツアナカシパンでは右体腔は腸体腔的に形成されるのに対し、左体腔は裂体腔的に形成された。このことは体腔の形成様式は変化しやすく、柔軟なものであることを示唆する。また、Hox遺伝子の発現部位と構造を対応づけることができ、Hox遺伝子群が五放射相称体制の形成に関与することが示唆された。現在、それぞれのHox遺伝子に対するモルフォリノアンチセンスオリゴを設計し、機能阻害実験を進めている。
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