今年度の研究は、本研究課題とは少し異なった研究を行った。その研究内容は以下のようである。 ・コピュラを用いてより正確な尤度関数を構成し、その尤度関数を用いて宇宙論パラメタの制限。 宇宙論パラメタなどを見積もるために、尤度関数を用いてサーベイのデータを解析する必要がある。間違った結果を与えないためにも、正確な尤度関数が必要である。従って、我々は新しくより正確な尤度関数を構成した。構成した尤度関数は、赤池情報量基準(AIC)が、従来の尤度関数より平均で2.35小さいことが分かった。この値は我々のモデルが統計的に優位であることを示している。尤度関数を構成する際に、コピュラと呼ばれる経済学で使われている数学的な道具を用いた。コピュラとは1点分布関数とn点分布関数をつなげる関数であり、非線形の相関構造を表すことができる。様々な相関を扱う天文学、宇宙論の研究にとって、コピュラは今まで解決できなかった問題を解く重要な道具になり得る。我々の研究は、コピュラという新しい道具を宇宙論へ導入するとともに、その有用性を示した初めての研究である。 また、新しく構成された尤度関数を用いて、宇宙論パラメタを制限した。25平方度の重力レンズサーベイを仮定し、従来の尤度関数を用いて解析すると宇宙論パラメタに数%の系統誤差を導くことが分かった。 この研究は、11、研究発表欄の通り、雑誌論文として掲載されていて、多くの国内外の学会、研究会などで発表した。
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