研究概要 |
今年度の研究は、本研究課題とは少し異なった研究を行った。その研究内容は以下のようである。 ・非線形バイアスと赤方偏移歪みのバリオン音響振動への影響 宇宙の未知の成分である暗黒物質、暗黒エネルギーに迫る有効な手法として、バリオン音響振動がある。バリオン音響振動は系統誤差が小さい方法として知られており、将来の広視野銀河赤方偏移サーベイにより、精密な観測結果を期待している。しかし、その一方で銀河バイアス、赤方偏移歪みという銀河赤方偏移サーベイでは避けられない系統的効果を考慮に入れたバリオン音響振動の理論的評価方法は未だに不十分である。 そこで、我々は、重力非線形成長を再和的に取り込めるのみならず、これらの系統的効果を自然に繰り込んだ理論であるLagrangian Resummation Theory(LRT;Matsubara 2008)と宇宙論的N体シミュレーションから求めた結果を比較することで、非線形バイアスや赤方偏移歪みがどのようにバリオン音響振動に影響を与えるかを見た。LRTは非線形成長によるスケール依存性を実空間で、k=0.35[h^<-1>Mpc](z=2,3)、赤方偏移空間でk=0.1[h^<-1>Mpc](z=2)、k=0.15[h^<-1>Mpc](z=3)まで1%の精度で再現できることが分かった。また、LRTはハローの相関関数のバリオンピークへの非線形性の影響を実空間、赤方偏移空間の両方ともで正確に記述できることが分かった。 この研究は、13.研究発表欄の通り、雑誌論文として掲載されていて多くの国内外の学会、研究会で発表した。
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