研究課題
研究代表者(以下代表者)は平成23年度、申請課題である垂直磁気異方性を有する強磁性細線中の磁壁電流駆動に関する研究に従事した。研究の主な目的は、電流による磁壁移動メカニズムの解明を通して磁壁移動に必要な電流密度(閾電流密度)の低減を実現、および磁壁移動速度の評価を行うことである。昨年度は、閾電流密度の細線幅および外部磁場依存性を調べ、Co/Ni細線中の磁壁移動が断熱的スピントランスファー効果によって引き起こされていることを実験的に示すとともに、線幅をコントロールすることで閾電流の低減が可能であることを示した。最終年度である今年度前半は、申請書に記載した研究実施計画に基づき、磁壁移動速度の定量的評価を行った。本研究で使用した強磁性体は垂直磁化Co/Ni多層膜であり、具体的な研究方法は申請書に記載されている通りである。昨年度までに習得した微細加工技術を用いて、線幅150nmの試料を作製し、そのデバイスを用いて磁壁移動速度の印加電流密度依存性を調べた。その結果、電流密度とともに速度は増加し、電流密度1.3×10^<11>A/m^2において約60m/sとなることわかった。この値は断熱的スピントランスファーモデルから予想される値と定量的に一致することがわかった。また、外部から磁場を印加した状態において、磁壁移動速度は外部磁場の大きさ及び方向にほとんど依存しないこともわかった。以上の実験結果を詳細に理解するために、数値シミュレーション結果との比較を行った。その結果、外部磁場に対する速度の安定性は、ラフネスなどの構造欠陥によってもたらされていることが明らかとなった。この事実は応用上きわめて重要である。なぜなら試料作製上避けることのできない欠陥によって、安定な磁壁移動が可能になることを示しているからである。上記の物理的、応用上の重要性が評価され、本研究成果はApplied Physics Letters誌に掲載された。
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すべて 雑誌論文 (6件) (うち査読あり 6件) 学会発表 (4件)
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