研究課題
本研究は、ダークエネルギーの物理的起源や初期宇宙での物理を明らかにするために、次世代の精密天文学としての重力波を用いて重力理論を検証することを目的としている。具体的には、重力波の波形やスペクトルを予言可能な連星系からの重力波及び背景重力波に焦点を当て修正重力理論の検証のための理論的枠組の構築および修正重力理論への制限に関する研究を行う。連星系から重力波による宇宙加速膨脹の測定に関しては、遠方(高赤方偏移)の宇宙までのハッブルパラメータを各赤方偏移で測定するという研究テーマについて、スペース重力波検出器の将来計画を用いればそれが可能であることを示した。また、宇宙膨張を測定するには電磁波観測によって連星系のホスト銀河を特定こと必須であったが、我々は新たに重力波の振幅情報だけでなく位相情報も用いることにより、電磁波観測の助けを借りずに宇宙膨張を測定出来るという結果を得た。さらに、その結果を応用し、ダークエネルギーを必要とせずに宇宙加速膨張を説明する非一様宇宙モデルに対して重力波を用いれば決定的な検証を行えることを示した。以上の結果は、将来的に重力波でダークエネルギー探査を行うための具体的方法として重要である。もう1つの研究トピックは背景重力波の直接観測による重力波偏極モード探査である。修正重力理論に制限を課すためには重力波の生成も修正重力理論によって扱う必要があるため、重力の高次曲率項がインフレーションを起こす理論モデルについて研究を行った。その結果、インフレーションを起こし、その後観測と矛盾せずに現在の宇宙を実現出来る修正重力理論を構築出来ることが分かった。そして、数値計算によって重力波スペクトルの計算を行い、重力波スペクトルに修正重力理論の特徴が現れること、それを重力波検出器の将来計画で検証出来る可能性があることを示した。
2: おおむね順調に進展している
幾つか研究テーマについては研究計画に沿って研究を進め、その結果の論文発表を行うことが出来た。一方で、想定していなかったテーマについても研究を行ったために、まだ手を付けられていない研究計画の部分があるため。
概しては研究計画に沿って、引き続き研究を進める。ただし、「修正重力理論における連星系から放射される重力波波形」に関しては研究計画提出直後にこの研究分野での幾らかの研究進展があり、連星から放射される重力波にはあまり大きな影響が無い傾向にあることが分かってきた。したがって、連星系からの重力波放射過程ではなく、重力波の伝播に着目して研究を進めていくことを予定している。
すべて 2012 2011
すべて 雑誌論文 (11件) (うち査読あり 11件) 学会発表 (8件)
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