自動車排ガス中の大気汚染物質を低減させるために、これらを選択的に検知できる高性能固体電気化学式センサが切望されている。本研究では、安定化ジルコニアと種々の単独酸化物、複合酸化物、酸化物混合体および貴金属を用いた固体電気化学式ガスセンサについて、炭化水素や一酸化炭素などを高感度かつ選択的に検知できる材料を見出し、それらのモデル排ガス中での応答特性評価、特異的ガス検知能の発現因子の解明などについて研究を進め、本年度は以下のような成果を得た。 1)貴金属ナノ粒子の検討:一酸化炭素に対して優れた応答を示す検知極材料について検討した。一酸化炭素に対してほとんど応答しない亜クロム酸亜鉛に、7種類の貴金属ナノ粒子をそれぞれ添加した検知極のガス応答を測定したところ、金、パラジウム、白金ナノ粒子を添加した場合に、一酸化炭素に対する応答が発現することがわかった。特に、金ナノ粒子を添加した場合に最も高い一酸化炭素感度を示した。 2)異なる粒子径の金の検討:一酸化炭素に対して比較的高い感度を示した素子のさらなる特性改善を目指して、粒子径の異なる3種類の金粒子を添加した亜クロム酸亜鉛検知極について検討した。その結果、金粒子径の増大とともに一酸化炭素感度は低下するが、応答/回復速度は改善された。中でも、サブミクロンサイズの金粒子を用いた場合に、比較的高い感度を保ちつつ、良好な応答・回復速度を示した。 3)一酸化炭素センサの応答特性:亜クロム酸亜鉛に金粒子を添加した検知極は一酸化炭素に対して高い感度を示すが、炭化水素に対しても高い感度を示したため、一酸化炭素選択性の改善について試みた。その結果、金粒子を亜クロム酸亜鉛に添加した検知極と、何も添加していない亜クロム酸亜鉛検知極とを組み合わせることで、良好な一酸化炭素選択性が得られた。また、本センサ素子は、一酸化炭素濃度の定量的測定が可能であることがわかった。
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