研究概要 |
これまでの研究で,ファンコニ貧血原因遺伝子産物であるFANCD2が,クロマチン構成因子であるコアヒストンと相互作用し,これをDNA上へとアセンブリするヒストンシャペロン活性を有している事を発見した。FANCD2は先行研究でDNA架橋修復に関与する事が示されているため,FANCD2のヒストンシャペロン活性とDNA架橋修復の関連性及び,反応の分子メカニズムの解明を目的として研究を行った。まず,ヒストンシャペロン活性の分子メカニズムを明らかにするため,FANCD2のヒストン結合部位の同定を行った。これはリコンビナントタンパク質として精製したニワトリFANCD2(cFANCD2)をプロテアーゼによって限定分解し,FANCD2をドメインに分ける事によって行った。その結果,FANCD2をアミノ酸1-1167及び953-1439の大きな二つのドメインに分ける事ができた。得られたドメインとヒストンH3/H4との相互作用をプルダウンアッセイによって解析した結果,cFANCD2(953-1439)にヒストンH3/H4が強く結合した。更なる解析の結果,アミノ酸1268-1389の領域でヒストンH3/H4と結合する事が明らかになった。このヒストン結合部位を欠いた変異体cFANCD2(1-1267)のシャペロン活性が極めて低下していた事から,FANCD2のC末端がヒストン結合及びシャペロン活性に重要である事が明らかになった。次にFANCD2のシャペロン活性とDNA架橋修復との関連を明らかにする為に,cFANCD2ノックアウト細胞に,cFANCD2(1-1267)を導入し,DNA架橋剤への感受性をコロニー形成アッセイで試験した。その結果,cFANCD2(1-1267)を導入した細胞でDNA架橋剤への感受性が観察された。この事から,FANCD2のシャペロン活性とDNA架橋修復の関連性が示唆された。
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