研究課題
物性に大きく関わるフェルミ準位近傍の電子構造を詳細に決定するため、超高分解能スピン分解光電子分光装置の建設・改良を行った。スピン分解をより高分解能で行うため、高効率のミニモット検出器と高輝度キセノンプラズマ放電管を配置した。また、スピン偏極率を3次元的に決定するため、アナライザーを通ってきた電子が軌道を90度まげてからミニモット検出器の間に入るよう、電子偏向器を設置した。建設した装置のエネルギー分解能は、スピン非分解/分解モードでそれぞれ、0.9meV、8meVを達成し、特にスピン分解時の8meVというエネルギー分解能は、従来よりも1-2桁も向上し、現在、世界最高分解能である。この結果についてはRev. Sci. Instrum.に掲載された。建設した装置を用いて、スピン軌道相互作用によってバンドが分裂する(Rashba効果)ことが知られている、V族半金属Biの表面電子状態について研究を行った。Bi表面におけるRashba効果の影響について詳細に議論するため、高品質Bi単結晶薄膜の作成とin-situスピン分解光電子分光(ARPES)測定を行った。Biのフェルミ面は、(1)Γ点を中心とした六角形の電子面、(2)電子面の周囲に細長く伸びたホール面、(3)M点を中心にしたプロペラ型の電子面から成るが、特に(2)のホールバンドについて試料上の様々な波数でスピン分解ARPESを行った。その結果、通常のRahba効果とは異なり、面内方向のスピン偏極率の大きさがΓ点を中心にして左右のホールバンドで非対称であること、また、面直方向に大きなスピン偏極率をもつことを明らかにした。この他、最近非常に大きな注目を集めているトポロジカル絶縁体についてスピン分解ARPES実験を行った。特に、Bi_2Te_3においては従来の装置よりも厳密に試料の測定波数を指定した実験を行うことにより、フェルミ面上のスピン偏極度の大きさに異方性があることを見出した。
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Review of Scientific Instruments
巻: 81 ページ: 095101-1-095101-4