昨今のペプチド・蛋白質・核酸医薬品等のバイオ医薬品シーズの増大、患者の生活の質(QOL)および高齢化に伴う嚥下困難な患者の増加を考慮すると、消化酵素による分解を回避でき、非侵襲性である経鼻・経肺・経皮投与が理想的な投与方法であると言える。しかしながら、元来粘膜・皮膚は外部環境から生体内部環境を保護するバリアとして機能しており、ごく一部を除き粘膜・皮膚バリアを効率よく透過しうる薬物は少なく、ここに非侵襲性投与法開発の難しさがある。 98年に京大月田グループにより、タイトジャンクション構成蛋白質claudinが生体バリアを司っていることが見出され、現在までにclaudinには24種類の分子が見出されている。興味深いことに発現およびバリア能には組織特異性が認められ、claudin-1は皮膚や粘膜、claudin-4は粘膜、claudin-5は血液脳関門においてバリア能を担っていることが明らかになっている。このことは、claudinを利用した新規薬物送達法開発の可能性を示唆している。以上の背景を踏まえ、申請者は、claudinを利用した薬物送達法の開発を目指して、claudinを利用した新規薬物送達方法の開発、claudin-4 modulator (C-CPE)の機能ドメイン解析、C-CPE誘導体ライブラリの構築、claudin binderスクリーニング系として出芽バキュロウイルス発現系の構築を実施してきた。 平成22年度は、出芽バキュロウイルス発現系を用いたclaudin binderスクリーニング条件を設定し、C-CPE誘導体ライブラリの中からclaudin-1 binderのスクリーニングを試み、claudin-1 binderの獲得に成功しており、研究実施計画を着実に遂行してきている。来年度は、得られたclaudin binderの中からclaudinバリア制御活性を有する新規claudin modulatorを選択し、その機能解析を行う。さらに、ヒト粘膜・皮膚モデル系を用いてclaudin modulatorの経粘膜・経皮吸収促進活性を評価し、claudinを利用した粘膜・皮膚バリア制御技術の創出を図る。
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