研究概要 |
今年度は、高効率太陽光発電のための量子切断利用波長変換カバーガラスの創製に向けて、様々な発光中心を添加した試料を作製し、エネルギー移動に関する物性評価を行った。エネルギー移動機構を解明することで、エネルギー移動効率を向上させる解決策を模索し、太陽電池の高効率化を目指した。本研究において、Ce^<3+>-Yb^<3+>間共添加YAG結晶を作製し、エネルギー移動効率と量子切断を含むエネルギー移動機構について調査を行った。発光・励起スペクトルから、本材料は、Ce^<3+>の4f-5d遷移によって500nm以下の波長の光を効率よく吸収し、Siのバンドギャップ付近である1μm付近のYb3+発光に変換されることを示し、非常に有用な波長変換材料になる可能性を示唆した。また、ドナー準位であるCe^<3+>の5d_1準位の蛍光寿命のYb添加による減少からエネルギー移動効率を見積もったところ、Yb濃度5%以上でエネルギー移動効率が50%を超えることを示した。しかしながら、直接量子収率測定によるYb発光の量子収率は、12%程度であった。また、我々は、深紫外~可視領域の詳細な励起スペクトル測定より、Yb発光モニターにおいて、Ce発光モニターの時に観測されなかった2つのピークを新たに観測した。これらのピークは、電荷移動状態(Charge transfer state, CTS)と原子価間電荷移動(Intervalence charge transfer, IVCT)の吸収に帰属され、Ce^<3+>からYb^<3+>へのメインのエネルギー移動は、量子切断ではなく、IVCTを介したエネルギー移動であることが示唆された。さらに、我々は、発光・励起スペクトルの温度依存性(20K~300K)が、CTS、IVCTの特徴に一致することを示した。以上の結果より、我々は、Y_3Al_5O_<12>結晶中におけるCe^<3+>-Yb^<3+>間のエネルギー移動モデルを提案した。
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