研究課題/領域番号 |
10J02820
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
山村 麻予 大阪大学, 人間科学研究科, 特別研究員(DC1)
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キーワード | 向社会的行動 / 児童期 / 青年期 / 発達的変化 |
研究概要 |
問題意識 本年度の研究目標は、向社会性に基づく行動が生起する際の「表出」と「非表出」について、児童期と青年期の差異を明らかにすることであった。昨年度の調査において、児童期後期には非表出的行動も場面によって「向社会的である」と認知されることが示された。しかし、より認知能力が発達し、対人関係や社会的文脈が複雑になる青年期では、同様の行動がどのように見られているのか不明瞭である。本年度は児童と大学生に対象を広げ、行動の表し方に対する評価の違いを検討した。 1)目的 向社会的葛藤場面において、どのように行動するのがふさわしいと認知しているのか、小学校高学年児童と大学生にどのような差が見られるのかを明らかにする。 2)方法 研究協力者…小学校4年・6年生182名、大学生95名。手続き…小学校は各学級単位で、大学生は講義において、質問紙を実施した。質問紙構成…a)自尊感情尺度10項目4件法。b)援助関係認知尺度17項目4件法。c)葛藤場面を三つ提示し、それぞれについて(1)直接的介入、(2)間接的介入、(3)非介入のどれが最適であり、不適当であるかについて、それぞれ一つを選択するように求めた。 3)結果と考察 学業場面(宿題を忘れた友人への対処)と悲哀場面(人目に付かない場所で泣いている友人への対処)において、最適な行動として選ばれた回答で、小学生と大学生に有意な差が見られた。前者では、小学生が間接的介入(アドバイスをする)を最適だとする人数が多かったのに対し、大学生では直接的介入(宿題を見せて写させる)が最適だとする人数が最多であった。後者の場面では、小学生が直接的介入(声をかけて慰める)ことをよしとし、大学生は非介入(そっとしておく)をよしとみなしていることが明らかとなった。以上より、児童期と青年期では,「状況に即した」行動の認知に、明らかな差が生じていることが明らかとなった。 また、同時に測定した個人特性との関連を検討すると、援助関係認知尺度において、他者に対する援助欲求が高い場合、自らが援助者となった場合、直接的介入を選択する傾向が示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究対象となる児童および生徒への調査依頼が、学校現場の諸事情により計画通りに進んでいないため。インフルエンザなどによる学級休業や、震災発生およびその事後に関する教育活動が実施されることにより、研究に協力できる時間的・労力的余裕が確保することが難しくなっているとのことである。
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今後の研究の推進方策 |
当初は再調査を行う予定であったが、上記の理由でいくつかの調査が実施困難であるため、対応策として、現在手元にあるデータについて、さらに詳細な分析を行い、目的の一部を達成することとする。また、これまでの研究協力校のほかにも調査依頼を行い、いくつかの学校において質問紙調査を実施することとする。 さらに、児童期から青年期への発達を詳細に検討する必要性が高まっているため、当初の計画通り、中学校・高校にも同様の調査・実験研究に対する協力を求める。
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