研究課題/領域番号 |
10J02843
|
研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
細田 將太郎 九州大学, 生体防御医学研究所, 特別研究員(DC1)
|
キーワード | FKBP38 / ANKMY2(ZMYND20) / 神経管閉鎖 / Sonic hedgehog(Shh) |
研究概要 |
<新規FKBP38結合タンパク質ANKMY2の機能解析> 申請者の課題は神経管閉鎖におけるFKBP38分子機構の解明である。 昨年度までに、FKBP38の機能を明らかにするため、神経特異的にHis-FLAG-FKBP38を発現するトランスジェニックマウスを作製し、FKBP38結合タンパク質を探索した。その結果、新規結合タンパク質候補としてANKMY2を同定した。今年度はANKMY2とFKBP38の結合の確認とANKMY2との機能解析を行った。 1)ANKMY2とFKBP38は直接結合する 既に、マウス脳のライセート中でFKBP38、ANKMY2が神経組織で生理的に結合することを明らかにしていた為、どのドメインが結合に必須かを検討した。その結果、FKBP38はN末端47アミノ酸が、ANKMY2はZn^<2+>-フィンガードメインファミリーに属するMYNDドメインが結合に必須であることを明らかにした。さらに、in vitro結合実験により両者が直接結合することを明らかとした。 2)ANKMY2はSonic hedgehog(Shh)シグナル促進因子である FKBP38はShhシグナルを抑制することが報告されてはいるものの、そのメカニズムは未知である。申請者は、ANKMY2がShhシグナル伝達の場であるciliaに局在するという報告やその他の示唆的な報告からANKMY2がShhシグナルを制御するという仮説を立てて実験を行った。その結果、興味深いことにANKMY2のsiRNAを用いたノックダウン細胞ではShhシグナルが減弱するという結果を得た。さらにANKMY2を過剰発現した細胞ではShhシグナルが増強する結果を得たので、ANKMY2はShhシグナルを正に制御する因子であり、FKBP38がその上流で制御していると予測している。現在、ANKMY2のノックアウトES細胞を購入し、マウスを作製中である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
申請者の課題は神経管閉鎖におけるFKBP38分子機構の解明である。現在までにその解明の糸口となる新規結合タンパク質を発見し、そのタンパク質がShhシグナルを制御するということまで明らかにできたことはかなりの進展だと考える。さらに遺伝学を用いた証明のためにノックアウトマウスを作製するつもりであったが、ノックアウトES細胞が存在し入手できたことから、進展は計画以上であると言える。
|
今後の研究の推進方策 |
本研究の目的は神経管閉鎖におけるFKBP38分子機構の解明である。神経管閉鎖の解析は主にマウスを用いて行われるが、今回は新規因子を発見しマウスで解析するということから、時間が長く必要となる。現在は、上記したように、ノックアウトマウスを用いて機能解析を行う予定であるが、時間の短縮と他の種での機能の保存を確かめる点でもマウス以外のモデル生物を併用して使う必要があると考える。今回はShhシグナル関与因子であるので、Shhシグナルがよく研究されているゼブラフィッシュを用いて、解析を行うことも考慮して実験を行いたいと考える。
|