研究概要 |
本研究の目的を、鳥類の光周性に関与する脳深部光受容器の候補分子、オプシン5(OPN5)とその発現部位である室傍器官(PVO)ニューロンの光反応性及びその特性の解明と位置づけ、本年度は下記の研究を随時並行して行った。また、哺乳類との比較を行う目的でマウスOPN5についての解析も実施した。 研究1:Real-time PER2-luciferase-reporter assayを用いたウズラ・マウスOPN5発現細胞の光反応性の解析 ウズラ及びマウスOPN5発現ベクターと、ポジティブポコントロールとしてマウスメラノプシン発現ベクターを作成し解析をしたが、光反応性に関する明瞭な結果を得ることはできなかった。 研究2:パッチクランプ法を用いたウズラOPN5発現細胞の光反応性及びその特性の解析 報告者はより迅速に解析を進めるために、オプシン5の光特性を解析する方法として、二本刺膜電位固定法を実施した。その結果、ウズラOPN5は光反応性があり、分光感度のピークを短波長側に持つ光受容分子であることが示唆された。さらに、目隠し及び松果体除去を施したウズラに短波長光を用いた長日刺激を与えることで、ウズラ精巣はフルサイズにまで発達することが明らかとなった。加えて、光周反応のマスター制御遺伝子であるTSHB mRNAの発現レベルを指標とすることで、ウズラにおける光周性の作用スペクトルを作成した。これにより、光周性には複数の光受容分子が関与していることが示唆された。 OPN5はこれまで光反応性や分光感度、その生理学的意義が明らかでない機能未知のオプシンであった。しかし、本研究成果によりOPN5の光特性だけでなく、OPN5が光周性に関わる脳深部光受容器として機能することを世界に先駆けて明らかにするに成功した(Nakane et al., 2010, PNAS)。
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