本研究課題はすばる望遠鏡次世代主焦点カメラ、HSC(Hyper Suprime Camera)で展開される大規模撮像サーベイの主目的である「宇宙大規模構造による弱重力レンズ効果の観測に基づく宇宙論」を理論・観測双方からサポートするものである。本年度の主な結果は以下の通りである。(1)現時点で世界最高精度の弱重力レンズサーベイであるCFHTLSと全く同様の解析手法を現主焦点カメラのデータに適用し、弱重力レンズ効果の検出を試みた。その結果、弱重力レンズ効果の検出に成功したが、一方で系統誤差の指標である8モードも有意に検出された。本結果は、既存の解析手法の不完全性およびすばる望遠鏡特有の問題を示唆していると考えられる。(2)大規模撮像サーベイによって得られる銀河の位置と歪みの情報を組み合わせて、インフレーション起源の始源非ガウス性を検出する手法を提案した。さらに本手法が大規模構造によって引き起こされる増光効果から受ける影響を詳細に調べ、増光効果を取り除く手法を構築した。本結果により、大規模撮像サーベイから無バイアスかつ詳細なインフレーション理論検証が行えることを示した。(3)宇宙大規模構造の統計的性質を正確に予言するため、ラグランジュ描像に基づく摂動論を用いることで、既存の4次摂動モデルを拡張し6次摂動モデルを構築することに成功した。また、本モデルの優位性を検証するため、重力多体シミュレーションとの比較を行い、従来のモデルに比べて精度が向上している事を確認した。特に、高赤方偏移における改善が顕著であり、SuMIRe PFSなどの次世代高赤方偏移分光サーベイに有用である事が示された。
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