研究課題/領域番号 |
10J02900
|
研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
須永 恵美子 京都大学, アジア・アフリカ地域研究研究科, 特別研究員(DC1)
|
キーワード | 各国文学 / 文学批評・文学理論 / 南アジア / イスラーム / 地域研究 |
研究概要 |
本研究の目的は、南アジアにおけるウルドゥー語出版を軸としながら、この地域のイスラームの社会的実態を研究し、ウルドゥー語で表現される南アジアのイスラーム認識を解明することである。本年度は、昨年度から継続してウルドゥー文学と出版に関する研究を遂行するとともに、ウルドゥー語と他言語との相関性に関するより詳細な研究を行った。昨年度の海外調査で入手した資料をもとに、新たに思想家サイイド・アブー・アル=アーラー・マウドゥーディーの宗教書における、言語学的な解析に取り組んだ。これらの成果を日本南アジア学会年次大会において発表したことで、今後の方向性に関して有益な視座を得ることができた。 海外調査に関しては、昨年度に引き続きパキスタンでの調査を二度行った。南アジアにおける出版拠点であるカラーチーやラーホールを訪問し、ウルドゥー語を中心としたパキスタン諸地域言語の資料を収集した。ムルターンのバハウッディーンザカリヤー大学や、ラーホールのガバメント・カレッジ、パンジャーブ大学ウルドゥー語学部などを訪問し、情報収集と人脈形成に努めた。これら現地調査での成果を論文にまとめ、ワーキングペーパーとして出版した。新たに入手した文献の解析も同時に進めたことにより、翌年に執筆予定の博士論文に備えることができた。 また、昨年度から継続して、『ウルドゥー語・ペルシア語・アラビア語宗教関連用語集』の作成に取り組んだ。今年度は、昨年度に収集した国内の大学図書館の蔵書や、前述の海外渡航で収集してきた外国語資料の整理を行った。これらを最終的に編纂し、来年度の出版を目指している。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本年度は二度の在外調査を行い、原典資料の収集と現地での人脈形成に努めた。また、ウルドゥー文学と出版の研究に加え、マウドゥーディーの宗教書の分析が概ね終了し、用語集の作成も順調に進むなど、当初の計画以上に進展したといえる。
|
今後の研究の推進方策 |
これまで文学と宗教書の言語に注目してきたが、今後はパキスタンを中心とした南アジアにおいて、どのようにこれらの出版物や言語が共有されているのか、社会と文学の相関性を明らかにしていきたい。また、引き続き論文や用語集の作成をすすめ、来年度内に博士論文の提出を目指す。
|