研究課題/領域番号 |
10J02908
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
仁平 ふくみ 東京大学, 大学院・人文社会系研究科, 特別研究員(DC1)
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キーワード | メキシコ / 女性 / 移住 / ユダヤ人 / 記憶 / 歴史 / 文学 / 自己アダプテーション |
研究概要 |
本年度の成果としては、まずヘルビッツ本人に再度インタビューができたこと、さらに深く詩の内容について検討し合うことができたことが挙げられる。ヘルビッツが住むアメリカ合衆国サンディエゴを訪れ、事前に送付した本研究員の研究をもとに話し合った。研究員の解釈と本人の解釈が異なる点などについて鋭い指摘をいただいた。また、二度目のインタビューでもあり、より家族史について、影響を受けた作家について語ってくれたことが収穫である。 このインタビューをもとに『移住』の翻訳を改稿している。また、昨年度に東京大学で行った発表と、ヘルビッツとの面会から発展させ、現在日本ジェンダー史学会に論文を投稿中である。有効なご指摘をいただき、社会的、メキシコ文学史の観点からよりわかりやすい説明が求められていることを知ることができた。再提出の際に改善する。 また、メキシコにおける「国民文学」とヘルビッツの文学との関係にも視野を広げ論じようと、メキシコにおける「文学」の意義をめぐる言説の研究にも着手している。 さらに、「自己アダプテーション」の観点からの研究も発展させている。ロベルト・ボラーニョ、ロドリゴ・フレサンなどの現代作家を参照しながらヘルビッツの独自性を分析している。国家というものとの距離の取り方、歴史への関わり方、自己の作品との距離感など、この二人の作家の手法を検討することで、ヘルビッツの創作の方法の必然性や現代における意義を見出すことができるのではないかと考えている。 女性であるヘルビッツの独自の記憶・歴史表象を論文化したこと、また国家と歴史を文学が記憶を用いてどのように表象していくのかという観点から研究をすすめることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
日本ジェンダー史学会に論文を投稿し、執筆の過程において、そして査読の先生方のご指摘によって現在必要とされている解説や研究、また不足している点を知ることができた点が大きい。(再提出し再査読をうける予定。)課題はメキシコにおけるユダヤ人の社会的位置の把握である。また、ヘルビッツへの再度のインタビューにも得るところが大きい。また「国民文学」「自己アダプテーション」というヘルビッツ研究上でのキーワードをつかんだことがある。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、投稿論文で受けた査読での指摘を中心に、ヘルビッツのメキシコ文学における位置、メキシコにおけるユダヤ人の状況面での研究を強化していかなければならないと考える。メキシコ合衆国での入手には限りがあるため、次年度での再度のアメリカ合衆国への渡航も検討している。 すでに着手しているメキシコでの「文学」のありかた、自己アダプテーションに関しても研究を継続する。 また、『移住』の翻訳の決定稿の作成も目標とする。
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