本研究の目的は、日本語を対象にして、スケール構造の観点から、動詞のアスペクトや比較表現の明示的な構成的意味論を構築することである。本年度は、この研究の基礎部分となる、日本語のテイル形の憲味分析と、その墓盤となるスケール構造に基づく動詞分類の研究の二点に関して、その骨格を完成させた。 上で述べた、スケール構造に基づく動詞分類は、従来の語彙意味論における動詞分類とは大きく異なる提案であるため、その正当性を他の現象に鑑みて検証する必要がある。来年度以降は、上記の今年度の研究成果に基づき、移動動詞の分類とそのアスペクト特性の分析、日本語の語彙的複合動詞の意昧合成、項の引継ぎに関する現象をスケール構造に基づく動詞分類の観点から再検討する研究を行う予定である。 また、上記の主な研究テーマと関連する研究として、以下の研究活動を行った。1、テクル、テイク形の意味分析。2、日本語の比較構文に関する研究(1)ヨリ句のmeasure functionに基づく分析、(2)explicit comparisonとimplicit comparisonの意味論、語用論(松井愛氏との共同研究)、(3)「以上に」「ぐらい」を用いた比較構文に関するHayashishita(2007)の分析の批判的考察。3、スケール意味論の可能性を考える試みとして、6月に日本言語学会においてワークショップ「スケール意味論に基づく語彙意味論、語用論r対する形式的アプローチの進展」を行った。4、論理文法の基盤を検討する研究の-環として、戸次大介氏らと「範疇文法と証明論」ワークショップを12月に主催した。
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