研究課題/領域番号 |
10J02912
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
窪田 悠介 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 特別研究員(PD)
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キーワード | スケール構造 / アスペクト / 語彙意味論 / 移動動詞 / 形式意味論 / 範疇文法 |
研究概要 |
本研究の目的は、日本語の動詞のアスペクト特性や比較表現の明示的な構成的意味論を構築することを目指し、スケール構造に基づくアスペクトの形式的な分析と、その基盤となる、論理学に基づく文法理論の研究をすすめることである。本年度は、昨年度に開始した具体的な言語現象の分析である、日本語のテイル形の意味分析と、移動動詞の意味論の分析を、意味論・統語論の国際学会(CSSP 2011, Sinn und Bedeutung 16)で発表し、学術誌へ投稿する草稿の準備を行った。また、昨年度に投稿した「以上に」「ぐらい」を用いた比較構文に関するHayashishita(2007)の分析の批判的考察の論文を、査読に基づき改稿・再提出し、『言語研究』に受理された。さらに、論理学に基づく文法理論の研究の一環として、オハイオ州立大学Bob Levine教授と範疇文法に基づく等位構造の分析の研究に着手し、その成果の一部を意味論・統語論の国際学会CSSP2011で発表した。また、この共同研究の一環として、Levine教授と共著で、言語学と論理学の学際的学会であるLogical Aspects of Computational Linguistics 2012に、英語のGappingに関する論文を投稿した。また、関連する研究活動として、現在滞在中であるオハイオ州立大学において、Bob Levine教授、Carl Pollard教授とともに、等位接続の統語論・意味論に関するセミナーを企画し、授業の準備、セミナーでの発表などを担当した。今年度は、さらに、関連する活動として、12月に戸次大介氏のゼミで、また、3月にシカゴ大学で開かれた日本語の統語論・意味論に関するインフォーマルなワークショップで、論理学に基づく文法理論の言語学への適用に関するトークを行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度に開始した日本語のアスペクト研究の事例研究は、今年度の国際学会での発表を通して、分析の大枠をかためることができ、学術誌への投稿の草稿を準備する準備がほぼ整った。また、今年度は、本研究のもう一つの側面である、アスペクト分析に形式的基盤を与えるための前提となる、論理学に基づく文法理論の研究に関して、滞在中であるオハイオ州立大学において受入研究者であるBob Levine教授との共同研究が大きく進展した。
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今後の研究の推進方策 |
来年度は、日本語アスペクト分析の論文二点を仕上げ、学徳誌への投稿を行う予定である。また、今年度より開始したBob Levine教授との共同研究は、句構造文法と範疇文法の文法理論としての妥当性を詳細に比較検討する大規模なプロジェクトへと発展させることを計画している。この研究は、等位構造のみならず、統語論・意味論のインターフェイスに関する様々な現象に関して新たな知見をもたらす可能性を持っており、今後も継続して長期的に取り組む予定である。
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