研究課題/領域番号 |
10J02940
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
能村 貴宏 北海道大学, 大学院・工学院, 特別研究員(DC1)
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キーワード | 蓄熱 / 潜熱蓄熱 / 廃熱 / 熱輸送 / 熱交換 / エクセルギー / 省エネルギー / 二酸化炭素 |
研究概要 |
本年度の成果は以下の通りである。 1)直接接触式潜熱蓄熱熱交換器の熱交換性能予測モデルの開発 潜熱蓄熱とは相変化物質(Phase Change Material :PCM)の固液相変化時の潜熱を利用して高密度に蓄放熱する技術である。PCMと熱媒体との直接接触熱交換は高速熱交換の点で有利であるが、その構造上、熱交換性能の予測が困難であった。本研究では直接接触式潜熱蓄熱熱交換器の放熱性能を予測する簡易モデルを作成した。その結果、最重要項目である潜熱放熱時間、潜熱放熱温度の点で実験値と整合性のあるモデルの開発に成功した。本研究の成果により、PCM、熱媒体、蓄熱槽形状等から直接接触式潜熱蓄熱熱交換器の熱交換性能予測が可能となった。 2)環境温度の変化を考慮したエクセルギー評価 コンビナートの再構築にはエネルギーと物質の流れを一括して定量的に評価する指標の導入が不可欠である。本研究ではエクセルギーに着目した。エクセルギーは通常環境温度を25℃一定として評価する。しかし、現実的には、季節、分野等によって環境温度は変化し、その影響を考慮する必要がある。本研究では環境温度の変化を考慮したエクセルギー評価を提案した。その結果、従来法では現れなかった価値の定量化が可能となった。 3)潜熱蓄熱材としてのエリスリトールの過冷却特性調査 PCMの過冷却現象利用により、長期間の熱貯蔵が可能となる。しかし、過冷却現象が系統的に整理された報告は皆無である。そこで本研究では、温熱供給用PCMとして有望であるエリスリトール(融点118℃、潜熱量340kJ/kg)の熱分析を実施し、過冷却特性を調査した。その結果、アルミニウム容器上でエリスリトールは約7℃程度まで過冷却することが明らかとなった。この結果は過冷却状態でエリスリトールを常温でも保存可能であることを意味し、エリスリトールによる長期間熱貯蔵の可能性を示唆した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
各項目共に当初計画した事項は順調に進展している。更に、環境温度の変化を考慮したエクセルギー評価等、当初計画には無かった新しい概念を提案、検討し、知見を得た。以上より、当初の本研究は現在のところ、当初の計画以上に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は本研究の最終年度となる。まず、次年度前半期は特に過冷却利用型潜熱蓄熱システムに関する基礎データを収集する。一方、後半期ではそれまでの成果を元に、本研究で提案した各システムの総合評価を精力的に実施する。当初予定では、室蘭・苫小牧地区に限定したシステム解析を実施する予定だったが、より一般的、汎用性の高いデータベース構築のため、モデル一貫製鉄所のシステム解析、システム再構築を実施する。
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