本年度は、交付申請書に記した研究計画に基づき、円盤・惑星相互作用の基礎過程の研究および円盤観測における示唆に関する研究を行なってきた。 まず、円盤・惑星相互作用の基礎過程に関する研究については、昨年度より継続して行ってきた非粘性円盤における惑星軌道周囲のギャップ生成過程を明らかにした(Muto et al.2010)。また、同時に離心率を持つ惑星と原始惑星系円盤との相互作用についても半解析的な計算を行ない、円盤と惑星の相互作用が力学摩擦という物理過程を用いて非常に良く記述できることを明らかにし、また様々な円盤のモデルに関して適用可能な軌道進化時間の公式を導いた。この公式は、惑星形成の統計的性質などに関する研究に簡単に応用可能である。本研究成果は現在論文を準備中である。 次に、円盤観測に対する理論的示唆に関する研究については、自己重力を考慮した円盤のモデルを構築し、赤外線の散乱光撮像観測及びミリ波・サブミリ波のダスト連続光撮像観測を組み合わせることで、円盤質量に対する良い制限を与えられる可能性について論じた。これは、近い将来のすばる望遠鏡やALMA望遠鏡の観測に直接結びつく可能性のある研究である。この研究の概要はすでに日本語の査読論文として雑誌『遊・星・人』に掲載され(武藤2010)、欧文論文も雑誌The Astrophysical Journalに投稿中である。 最後に、惑星形成と文脈は異なるものの、似たような過程が起こると期待されるブラックホール連星系に関する研究も行ない(Seto and Muto 2010)、惑星形成の知識を応用しつつ研究の幅を拡げている。本研究についても、続編の論文を現在投稿中である。
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