今年度は、(1)円盤・惑星相互作用の理論的計算および(2)観測との関連について研究を進めていくことを研究計画としていた。 まず、(1)の円盤・惑星相互作用の理論的計算については、昨年度から継続して行っていた高離心率の惑星と原始惑星系円盤のモデルに関する研究について、その成果を論文として公表することが出来た。さらに、この研究を発展させて非線形の数値計算を行う研究を、メキシコの研究者と共同で進めている。また、2011年7月に北京で行われた滞在型の国際研究会に参加した際、関連する研究を、プリンストン高等研究所のHanno Rein研究員が同時期に行っていたということが分かったが、私の研究とRein氏の研究を組み合わせ、より発展させる方向での共同研究を計画している。以上のような研究により、円盤・惑星相互作用の基礎的な物理過程の理解と、惑星形成理論における役割についてより深い理解が深まるものと期待される。 (2)の観測との関連については、円盤におけるギャップの観測と、そこから得られる円盤物理状態の示唆に関するモデルの論文を公表した。また、国立天文台が中心となって行われているSEEDS計画の一環として得られた観測データの解析を行った。すばる望遠鏡の最新装置を用いて得られた原始惑星系円盤の詳細な観測画像について、密度波理論を応用することで、力学的過程を求めた円盤の温度分布を推定するという、新しい手法を提案した。以上の研究により、これまで理論的な研究が中心だった円盤・惑星相互作用について、実際の観測への具体的な応用の道を拓いていけるものと期待される。
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