研究概要 |
マウス胎児冠動脈評価系の確立:本研究の解析対であるマウス胎児の冠動脈を評価するべく、2つの評価系を作成した。(1)インク注入法:冠動脈の形態を立体的に評価でき、更には簡便で定性評価に適した方法として、マウス胎児の心臓を摘出後、上行大動脈より逆行性にインクを注入する方法を作成した。組織は脱水後に透明化処理を加える事で、これまで評価が困難であった、心臓中隔枝等の深部の血管まで評価する事が可能となった。(2)抗内皮細胞抗体による免疫組織染色:マウス胎児の心臓血管内皮細胞は、抗原性が低く免疫組織染色が困難であった。しかし、メタノール固定を行い凍結切片を作製する事で、特異性の高い染色を可能とした。 上記の方法でエンドセリン-1(ET-1)、エンドセリンA型受容体(ETAR)それぞれのノックアウトマウスを評価した結果、今回新たに2種類の冠動脈形態異常を発見した。(1)マウス中隔枝の異常拡張;ET-,ETAR両KOマウスでは、冠動脈中隔枝の一部が異常に拡張する事がわかった。同病変部には平滑筋細胞の被覆が不完全であるため、血管の成熟過程における異常が生じている可能性が示唆された。(2)マウス中隔枝起始部の変位:通常ICRマウスdでは9割の個体で中隔枝は右冠動脈より分枝する。しかし、ET-1,ETAR KOマウスでは中隔枝の起始部が左冠動脈へと完全に変位する事が明らかとなった。胎生期をさかのぼると、通常E13.5-E14.5では中隔枝は左冠動脈から分枝しており、E15.5-E16.5にかけて右冠動脈へと変位する、しかし、KOマウスでは左から右への変位が生じていない事が冠動脈インク注入法による検討で明らかとなった。
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