今年度は、非可換離散群S4を用いて、レプトンの世代混合としてtri-bimaximal混合を導き、クォークの世代混合、特にカビボ角を導く模型を構築した。この模型は、大統一理論(GUT)の枠組みで構築していて、レプトンとクォークの世代混合を統一的に説明できる。このことは、これまでの研究には多くは見られなかったことである。さらに、現象解析として、模型を超対称性(SUSY)化してフレーバーの変わる中性カレント(FCNC)の大きさの予言と、Tevatronで見られたBメソンのCPの破れの大きさについての予言をした。さらに、これまでのフレーバー対称性の先行研究では、様々な対称性を導入しているが、一つ一つの対称性の特徴やお互いの関係を調べ、まとめたものはほとんど存在しない。そこで、非可換離散対称性の特徴を調べ、サプレメントをProgress of Theoretical Physicsへ投稿し、出版された。非可換離散対称性が、クォーク・レプトンやSUSY粒子の質量スペクトルやフレーバー混合をコントロールし、FCNCが抑制されることが定量的に解明されると、フレーバー対称性が確立され、LHCやMEG等の実験に重要な成果を期待させるという点で、大きなインパクトを与える。また、これらの研究成果をドイツのボンで開催された国際会議(SUSY 2010)で発表した。国際的に活動をすることは、これから研究活動を進める上で、非常に重要なことだと感じる。さらに、京都大学と神戸大学からセミナーに招待され、世代対称性、特に、非可換離散群を用いた現象論について講演を行った。
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