• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 課題ページに戻る

2011 年度 実績報告書

カーボンナノチューブを用いた単一生体分子応答計測

研究課題

研究課題/領域番号 10J03027
研究機関東北大学

研究代表者

猪股 直生  東北大学, 大学院・工学研究科, 特別研究員(DC1)

キーワード熱センサ / カンチレバー構造 / マイクロ流体チップ / カーボンナノチューブ
研究概要

本研究の目的はカーボンナノチューブを用いた高感度温度センシングシステムを構築し,単一生体分子の熱測定を行うことである.23年度の実施計画は計測システムの構築とその評価,および褐色脂肪細胞を用いた実験である.振動型微小熱センサを,マイクロ流体チップを用いて局所的に真空下に置くことで,液中における熱損失と振動減衰を防ぐことができる.実際にデバイスを作製し,振動型熱センサを支持するマイクロ流体チップ内部の壁の厚さと伝熱効率の関係を評価した.壁の厚さが10μmの時,最大の効率55%を得た.さらにマイクロ流路に水を流入し,同様の評価を行ったところ,効率は48%であった.液中ではセンサ周辺に96%の熱が逃げることが理論的に明らかになっており,それと比較すると大幅に改善されている.さらに,熱センサのQ値を比較したところ,マイクロ流路に水を流入する前後で4000と変化がなかった.これは,水のリークがなく,感度も維持できることを示している.アラン偏差により振動型熱センサの周波数安定性を評価したところ,0.015 ppmであり,S/N比を基に熱分解能を計算すると5.2 pJとなった.このデバイスを用いて,単一の褐色脂肪細胞の熱計測を行った.マイクロ流路中にあるサンプルステージに細胞を一つ付着させ,薬剤刺激の有無による熱計測を行った.薬剤刺激前のバッファ液のみでも,'数分に一度パルスに近い発熱を観察した.薬剤刺激を行うと,バルクでの計測と同様に,緩やかに温度が上昇し,発熱が20分程度続いた.前者の反応はこれまで報告されたことがなく,不活性化した細胞ではいずれの発熱現象が確認できなかったことからも,何かしらの生体由来の反応と推測できるが,原因の断定には至っていない.以上より,単一細胞熱計測用デバイスを作製し,実際に単一細胞を用いた実験により,バルク計測と同様の結果はもちろん,バルク計測では報告されていない現象の観察に成功した.

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

1: 当初の計画以上に進展している

理由

コンセプトの変更があったにも関わらず,今年度の実施計画の根幹をなす褐色脂肪細胞の熱計測に成功した点および作製したデバイスの評価実験を通して課題が明らかになり,さらなる改善の余地と,その解決方法を見出すことができた点.

今後の研究の推進方策

単一細胞に比べ,単一生体分子の発熱量は大幅に低いことは容易に予想される.現在の問題はドリフト等のノイズと,細胞の発熱自体の周囲の水への拡散が問題となっている.前者に関して,現在は熱センサの振動検出にレーザードップラー振動計を用いているが,静電容量を用いた検出方法を用いることで解決を試みる.後者に関して,マイクロ流路に水があるために生じる問題なので,サンプルを液体に包みこみ,空気による断熱を行って,熱損失を軽減する対策を講じる.

  • 研究成果

    (6件)

すべて 2012 2011

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (4件) 産業財産権 (1件)

  • [雑誌論文] Investigation of the Resistance Dependence on Temperature of Single Carbon Nanotube in Different Environments2011

    • 著者名/発表者名
      Naoki Inomata, Fumihito Arai
    • 雑誌名

      Japanese Journal of Applied Physics

      巻: 50 ページ: 125101

    • DOI

      10.1143/JJAP.50.125101

    • 査読あり
  • [学会発表] RESONANT THERMAL SENSOR FOR A LIVING CELL IN LIQUID2012

    • 著者名/発表者名
      N.Inomata
    • 学会等名
      25th IEEE International Conference on Micro Electro Mechanical Systems
    • 発表場所
      Marriott Paris Rive Gauche Hotel (FRANCE)
    • 年月日
      2012-01-31
  • [学会発表] Vacuum-packaged Resonant Thermal Sensor for Biological Cell in liquid2011

    • 著者名/発表者名
      N.Inomata
    • 学会等名
      24th International Microprocesses and Nanotechnology Conference
    • 発表場所
      ANA Hotel Kyoto(京都府)
    • 年月日
      2011-10-27
  • [学会発表] 液中における細胞熱計測のための真空封止マイクロカンチレバー型熱量センサ2011

    • 著者名/発表者名
      猪股直生
    • 学会等名
      第28回「センサ・マイクロマシンと応用システム」シンポジウム
    • 発表場所
      タワーホール堀越(東京都)
    • 年月日
      2011-09-26
  • [学会発表] 液中での細胞熱計測のための真空封止マイクロカンチレバー型熱量センサの作製と評価2011

    • 著者名/発表者名
      猪股直生
    • 学会等名
      第72回応用物理学会学術講演会
    • 発表場所
      山形大学(山形県)
    • 年月日
      2011-08-30
  • [産業財産権] 熱量センサ及び熱量センサを用いた熱量検出装置並びに熱量センサの製造方法2012

    • 発明者名
      小野崇人, 猪股直生, 戸田雅也
    • 権利者名
      東北大学
    • 産業財産権番号
      特許,特願2012-61235
    • 出願年月日
      2012-03-16

URL: 

公開日: 2013-06-26  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi