当該年度において、PMLが感染性HCV粒子産生に関与していること、そしてPML関連タンパク質であるINI1とDDX5もHCVの生活環に関与していることを、感染性ウイルス粒子産生系であるJFH1感染細胞と異なったHCV株J6/JFH1を用いて明らかにし、この研究成果をBiochem. Biophys. Res. Commun.に発表した。またPMLとは別に、細胞質において形成される構造体P-bodyにも着目し、HCV複製との関係を明らかにした。当該年度はP-body因子であり、HIV-1複製を抑制するとの報告があるシチジンデアミナーゼAPOBEC3G/3FやRNAヘリケースMOV10のHCV複製への影響を調べた。先ず、HCV感染や複製により、APOBEC3GやMOV10のP-body局在が変化するのかについて、免疫蛍光染色法により観察した結果、これらの因子のP-body局在が撹乱され、HCV複製細胞中でHCVコアタンパク質と共局在することが分かった。一方でAPOBEC3G/3Fの強制発現細胞やMOV10のノックダウン細胞におけるHCV複製レベルがコントロール細胞と比べて同程度であったことから、これらの宿主因子はHCV複製の抑制因子とならないことを明らかにした。これはP-body因子の異なったRNAウイルスの複製機構における役割を示唆し、ウイルスの重複感染治療法の解明に役立つものと考えられる。以上の研究成果を現在、論文投稿中である。また、これらの研究成果は本研究の目的である「HCV複製に関与している宿主因子を同定すること」を達成しており、未だ成し遂げられていない遺伝子型1bのHCV粒子産生系の開発につながるため重要である。
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