研究課題/領域番号 |
10J03275
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
森廣 邦彦 大阪大学, 薬学研究科, 特別研究員(DC1)
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キーワード | 人工核酸 / オリゴヌクレオチド / 光応答性 / BNA / 遺伝子発現制御 |
研究概要 |
採用第2年度目の平成23年度は、初年度に引き続き糖部ベンジリデンアセタール架橋部位に光分解性官能基を導入した光応答性BNA類の機能評価を中心に研究を進めた。その結果、ベンジリデンアセタール部に異なる光分解性官能基を導入することで、光による架橋開裂速度とその後のグルタチオンとの反応性が大きく変化することが明らかとなった。また同時に開発した酸もしくは還元剤応答性BNAについてもその適応可能範囲を精査するべく、様々なpHの緩衝液や還元剤で処理して構造変化を詳細に調べた。 また本年度から核酸糖部だけでなく、核酸塩基部を光分解性官能基で修飾した光応答性人工核酸の開発にも着手した。すなわち、光照射によって認識塩基が変化するような人工核酸を設計、合成することとした。まず非天然核酸塩基2-メルカプトベンズイミダゾール誘導体と8-メルカプトヒポキサンチン誘導体を有する人工核酸を合成し、その硫黄原子を光分解性6-ニトロベラトリル基で修飾した。この2つの人工核酸をオリゴヌクレオチド中に導入し、光照射による構造変化をHPLCやMALDI-TOF MS測定により評価した結果、365nmの光照射によって光分解性官能基が効率よく除去できることが明らかとなった。続いてそれぞれを導入したオリゴヌクレオチドと相補鎖DNAとの二重鎖の融解温度を測定した。2つの非天然核酸塩基はともに光照射前はグアニンと選択的に塩基対を形成したが、光照射後はアデニンに対して最も高い結合親和性を示した。この認識塩基の変化はオリゴヌクレオチドの配列を変えた場合も同じであった。一方で標的がRNAの場合、2-メルカプトベンズイミダゾールの機能性に変化はなかったが、8-メルカプトヒポキサンチン誘導体は光照射前にどの塩基とも塩基対を形成しなかった。この原因は現在分子モデリングなどを用いて解明中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
核酸糖部にベンジリデンアセタール架橋を施した外部刺激応答型BNA類を開発し、それらが光だけでなく様々な外部刺激に応答して性質を変化させることを明らかとした。これらの結果は論文として取りまとめ、国際誌に発表した。また新たに塩基部を修飾した光応答性人工核酸の開発にも着手し、その結果の一部を国内の学会で発表した。
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今後の研究の推進方策 |
今後はこれまでに引き続き光応答性をもつ新しい機能性人工核酸の合成とその評価を行っていく。その際には融解温度測定だけでなく、ゲル電気泳動やCDスペクトルを利用してより詳細に機能性を精査する。これまでに合成した化合物は細胞系での評価も検討し、本研究の有用性を確かめる。また光応答性を改善するべく、より長波長で分解される光分解性官能基の利用も検討する。
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