研究課題
本研究ではダークエネルギーのモデルとしてf(R)重力理論の特徴を調べ、観測的に検証することに主眼をおき解析を行ってきた。今年度の研究は、大きく三つに分けられる。一つは前年度の継続研究としてf(R)重力理論における密度揺らぎの時間発展を数値計算によりシミュレーションしたことである。その結果、実効的ダークエネルギーの状態方程式パラメータがー1より小さくなるファントムクロッシングや密度揺らぎの成長を特徴づける成長因子の時間およびスケール依存性などの特徴を抽出した。またf(R)重力理論は物質密度揺らぎのパワースペクトルを増加させる効果を持つため、数値計算結果と観測的制限を比較してモデルパラメータを制限した。次に私は上記の数値計算に質量を持ったニュートリノの効果を考慮した。従来の修正重力理論研究では質量を持ったニュートリノの存在は看過されてきた。本研究の結果、大規模構造のデータを用いることでf(R)重力理論のモデルパラメータとニュートリノ質量の両方に対して制限を与えられることが判明した。観測的にはf(R)重力理論の効果とニュートリノの効果の縮退をどのようにして解くかが問題となり、この点は次年度以降の課題となる。三つめの研究はf(R)重力理論の理論的な側面に着目し、描かれる宇宙の将来像を分類したことである。これは一つめの研究で判明したファントムクロッシングという現象をさらに発展させたもので、f(R)重力理論特有の現象である実効的ダークエネルギーの状態方程式パラメータの減衰振動を分類する基準を確立した。これは遠い未来のシミュレーションであるため観測量ではないが、理論の特徴を把握できるという点で重要であり、上記二つの研究と相補的な立場にある。これらの研究により、f(R)重力理論の理解がより深いものとなるとともに、さらなる研究課題も発見され、次年度以降の研究につながるものとなった。
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Proceedings of the 20th Workshop on General Relativity and Gravitation in Japan
巻: 印刷中(掲載確定)
Proceedings of 2nd International Workshop on Dark Matter, Dark Energy and Matter-Antimatter Asymmetry
Progress of Theoretical Physics
巻: Volume 123 ページ: 887-902
巻: Volume 124 ページ: 541-546
http://www.resceu.s.u-tokyo.ac.jp/~motohashi/index.html