ベイズ分位点回帰モデルにおいては尤度関数に非対称ラプラス分布が用いられる.しかし、非対称ラプラス分布は実際に観測されたデータの尤度ではないため、制約的である.本研究では、このような制約にとらわれないより柔軟な分位点回帰の非線形モデルや時系列モデルを開発するために、一般化ラムダ分布に注目することにし、以下の2点について研究を行った. (1)一般化ラムダ分布は分布が分位点関数によってのみ定義され、尤度関数が求めることができない.尤度関数の評価が困難であるときにはApproximate Bayesian Computation(ABC)という手法を用いることで事後分布からサンプリングを行うができる.近年マルコフ連鎖モンテカルロ法(MCMC)を基にしたABCアルゴリズムが開発されたが、このアルゴリズムは初期値に対して敏感であること、サンプルに高い自己相関があること、採択確率が低いことなどといった問題があり、これらの問題を改善する必要があった.本研究では、マルコフ連鎖の次のステップについて複数の点を提案する複数提案アルゴリズムを開発した.複数提案アルゴリズムはQi and Liu(2001)のMultiple-Point Metreopolis(MPM)アルゴリズムが有名であるが、MPMで使われるウェイト関数は制約的な形をとっており、直接ABCに応用することはできない.本研究によるGeneralized Multiple-Point(GMP)アルゴリズムは任意のウェイト関数を使用することができ、さらに柔軟な提案分布の構築を可能にしている.シミュレーションにより、GMPは従来のABCアルゴリズムが抱える問題点をすべて改善するということが明らかになった. (2)一般化ラムダ分布を用いた分位点回帰モデルを開発するに当たって、まず比較的単純な線形モデルを考えた.回帰モデルの誤差項が分位点に制約をかけた一般化ラムダ分布に従っていると仮定し、ABCによって推定を行った
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