研究課題
平成24年度は、厳冬期の樹木冬芽の凍結適応機構を分子レベルで明らかにするために、氷点下温度に対して細胞内水分を過冷却状態に保つことによって適応する原基を持つカラマツ冬芽を用い、水の過冷却を保つための細胞内成分の探索を試みた。はじめに、カラマツ冬芽5g新鮮重から得られたメタノール粗抽出物を1mlの水に溶解した水溶液と市販の蒸留水の凍結温度の差を過冷却活性として調べたところ、メタノール粗抽出水溶液は4.6℃の過冷却活性を示した。つぎに、メタノール粗抽出物を有機溶媒に対する溶解性の違いによって分画し、酢酸エチル画分、メタノール画分および残渣画分を得た後、過冷却活性を測定したところ、メタノール画分においてのみ6.4℃の過冷却活性が検出された。さらに、セファデックスLH-20カラムを用いてメタノール画分を分子量の違いによって3画分に分画したところ、画分1では過冷却活性は検出されず、画分2では5.5℃、画分3では3.2℃の過冷却活性が検出された。そして、最も高い活性が得られた画分2には、炭水化物であるピニトール、フルクトース、グルコース、スクロース、メリビオース、ラフィノースが主成分として含まれていることが明らかになった。しかし、得られた6種類の炭水化物の市販品を用いて画分2に含まれる濃度と同様になるように混合水溶液を調製したところ、2.4℃の過冷却活性を示したが、セファデックス画分2の過冷却活性には至らなかった。また、3.2℃の過冷却活性を示した画分3には6種類の炭水化物は含まれていなかった。これらの結果により、主成分である炭水化物のみならずその他の物質が過冷却活性に寄与することが示唆された。
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