高濃度CO_2環境が森林土壌へのメタン(CH_4)の吸収に与える影響を調べるために、北海道大学札幌研究林実験苗畑の開放系大気CO_2増加(FACE : Free Air CO_2 Enrichment)システムを利用して調査を行った。測定期間中、土壌へのCH_4吸収量は対照区に比べて高CO_2区で約半分に減少したが、土壌タイプの間には有意的な差は見られなかった。対照区ではCH_4は全測定地点で土壌に吸収されていたが、高CO_2区ではCH_4が発生している地点が観察された。土壌水分はFACE区で有意に高く、土壌水分とCH_4吸収量の間に負の関係が見られた。また、山火事が森林土壌からの温室効果ガス(CO_2、CH_4及びN_2O)フラックスに与える影響を調べるために、北海道大学北方生物圏フィールド科学センターの天塩研究林でモニター調査を遂行した。地表火は下層植生および林床有機物の燃焼によって土壌からのCO_2発生量の減少を引き起こしたが、CH_4の吸収量の増加とN_2Oの発生量の一時的増加の傾向が認められた。 現在、本研究は計画どおりフィールド調査、試料サンプリング及び各種実験などが順調に進んでいる。この1年間、4件(筆頭:2件、共著:2件)の研究論文や総説を発表した。報告者は2010年4月中旬に北海道美深で開催された第4回TreeSap国際シンポジウムで山火事実験(北海道大学北方生物圏フィールド科学センター天塩研究林)の結果を発表した。また、第23回IUFRO世界総会(2010年8月、韓国ソウル)と第52回韓国林学会(2011年2月、韓国慶州)でのポスター発表を1件ずつ行った。第23回IUFRO世界総会で発表した窒素付加実験の内容は関連ジャーナルに投稿する計画である。
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