森林土壌からの温室効果ガスの動態は本研究で行った高濃度CO_2環境、窒素沈着及び山火事による森林内の環境変化に影響されることが明らかになった。特に、温室効果ガスの動態変化は各環境変化によって異なった。まず、高濃度CO_2環境における土壌へのCH_4吸収量は減少したが、それは樹木の気孔閉鎖や林床からの蒸発量の減少による土壌水分の上昇と負の関係があることが観察された。次に窒素沈着が森林土壌における温室効果ガスに与える影響を評価するために遂行した窒素付加は、土壌中の無機態窒素の濃度の増加と共に、CH_4吸収量の低下やN_2O発生量の増加を引き起こした。最後に局地的環境変化として注目した山火事は、林分内の下層植生と有機物層を燃焼したが、それによって土壌からのCO_2発生量は減少した。なお、土壌からのN_2O発生量は山火事後に生産された炭の有無によって異なった。これらの結果、CO_2放出量は土壌の温度と水分量の影響を受けること、高CO_2環境及び大気からの窒素沈着が進行すると、森林土壌はCH_4の吸収源として期待が出来なくなること、N_2Oは窒素沈着が進行すると、その発生量がより増加することが明らかになった。なお、山火事後の炭の存在は、N_2Oをはじめ各種GHGの動態に影響を及ぼすことが明らかになった。 採用第2年目の間(2011年4月-2012年2月)、5件(筆頭:2件、共著:3件)の研究論文や総説を発表した。報告者は2011年8月に韓国の大田で開催された第52回韓国森林学会および2011年12月にアメリカのサン・フランシスコで開催されたAGU(米国地球物理連合)総会で窒素付加実験(北海道大学北方生物圏フィールド科学センター札幌研究林の実験苗畑)の結果を発表した。また、第53回韓国森林学会(2012年2月、韓国済州)で山火事実験の結果を発表した。今までの研究結果は全て関連ジャーナル(日本大気環境学会誌・European Journal of Forest Research・Atmospheric Environment)に掲載された。
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