研究課題/領域番号 |
10J03411
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
尾崎 太郎 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 特別研究員(DC1)
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キーワード | プレニル基転移酵素 / フェナジン / 生合成 / 新規化合物創製 / 放線菌 |
研究概要 |
平成22年度の研究によって、ラバンドシアニン(LAV)生合成におけるフェナジンの窒素原子をプレニル化する酵素(PTase)遺伝子を同定し、その機能解析を行った。平成23年度は一昨年度までに明らかにできなかったテルペノイドの分岐や環化を触媒する酵素遺伝子の同定を目指して研究を行った。PTaseの反応で生成した5-N-ジメチルアリル-1-フェナジノン(NDP)が生合成中間体であると考えられたので、この化合物をPTase遺伝子破壊株に添加し、最終産物であるLAVの生産が回復するか試験した。しかし、LAVの生産は回復しなかったため、プレニル化、テルペノイドの分岐、環化が順次進行するという仮説は誤りであると結論した。それに代わり、環状テルペノイドであるシクロラバンドリル二リン酸が生成したのち、フェナジン骨格に転移すると仮説を立て、LAV生産菌のドラフトシーケンスから目的遺伝子を探索した。LAVと同様にシクロラバンドリル基を持つラバンドキノシン生産菌のドラフトシーケンスとの比較から、両菌株に特異的に存在するテルペノイド生合成遺伝子を見出した。この遺伝子をクローニングし、組換えタンパク質を調製した。組換えタンパク質をマグネシウムイオンの存在下、ジメチルアリル二リン酸と反応させたところ、新たな化合物の生成が確認された。また、この反応溶液を基質として用い、フェナジンのプレニル化反応を行ったところ、LAVの生成が確認された。このことから、本年度同定したテルペノイド生合成遺伝子がシクロラバンドリル二リン酸を合成していることが示唆された。現在、反応産物を精製し、その構造解析を行っている。シクロラバンドリル基は様々な生物活性物質に見出される部分構造であり、本研究はそれらの化合物の生合成にも重要な知見を与えると期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成23年度の研究計画に記載したシクロランドリル基を形成する酵素遺伝子を同定し、その活性の検出に成功したため。反応産物の構造決定や、酵素学的な解析等解析すべき点はいくつか残っているが、平成24年度に行うことが十分可能であると判断したため、おおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
これまでに同定したラバンドシアニン生合成遺伝子を一つのベクターにクローニングし、異種放線菌に導入することでラバンドシアニンの異種生産を目指す。それによって、ラバンドシアニン生合成の最小遺伝子単位を決定する。また、各生合成遺伝子について、各組換えタンパク質の詳細な酵素学的な解析を行う。また、X線結晶構造解析も行い、各酵素の基質認識や触媒機構について考察を加える。
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